岐阜県各務原市は20~23日に市高校生美術展を開催するのを前に、若い世代へ表現の場を創出する取り組み「ART LABかかみがはら」を立ち上げた。第1弾として各務原西高校出身で、国内外で活躍する現代美術家大巻伸嗣さん(50)を講師に迎え、市内でワークショップ「表現-行為を通じて考えること」を開いた。
大巻さんは1971年岐阜市生まれ。影、闇などの身近ではあるが意識から外れてしまうものに目を向け、「存在」とは何かをテーマに創作活動を展開。国内外で精力的に作品を発表している。
ワークショップには県内外の高校生14人が参加した。あらかじめ貼り合わされた20メートル×10メートルの巨大な白い和紙の"空間"が表現の舞台。絵の具や墨、ゴムボールやロープなどの道具も用意した。冒頭、大巻さんは竹ぼうきから好きな竹を1本抜くよう指示した上で、「背負ってきたものをフラットにして、一緒に空間を作り上げよう」と呼び掛け。身体の拡張、他人との距離を意識しながら、紙の上に軌跡を描き「世界にまだ存在していない、ただ一つの大地」を作るのがミッションだという。
紙の上に参加者を立たせ、まずは手で、次に足の指を使って、クレヨンで自分を中心に円を描かせる。次に、寝た状態で自分でできる最大限の円を描かせた。
さらに、自分が選んだ竹の先にクレヨンを結び付け、円を描かせる。力が入りにくく弱い線しか描けないが、「うまくできなくても、痕跡が残ればいい。自分で考えて、できるだけ頑張ること。1回で決めようとせずに何回もやって。美術は結果ではなく、やっている行為の向こう側にある」と大巻さん。
その後、ペアを組ませて1人が目隠しをし、もう1人が指示を出して「真っすぐ」な線を描かせた。徐々に生徒たちは筆を手放し、手や足の裏など身体を自由に使って描くようになっていく。制作時間が終わる頃には、真っ白な空間が絵の具で彩られた。
大巻さんは、「真っすぐ」な線を引かせた意味について「他人が作った基準に沿って何も疑わずに生きるのではなく、たとえ曲がっていても自分にとっての『真っすぐ』な道を進むべき、という思い」と語る。生徒たちは「いつもの、ではないやり方が楽しかった」と感想を口にし、2時間かけて作り上げた「大地」を2階からじっと見つめた。
大巻さんは「価値観の再確認」と、ワークショップを振り返る。自分の考えを持つことの大切さを強調し、自分自身で価値を定めなければならない、というところから、社会の尺度を問い直したという。「高校生は、大人になりきれなくても未来をつくらないといけないという気負いを感じている。立ち位置が微妙な年代。解放させるのがアートの役目。間違った線を引くことへの恐怖から解放し、自分にとっての『真っすぐ』な線を自信を持って引くことの大切さを伝えたい」
作品を作るという使命の下では自由なエネルギーが生まれにくい。「線を引くという行為が痕跡となり彼らが生きた証しになった時、それが『作品』に値する」と大巻さん。生徒たちが出来上がった「作品」を見つめ続けていたことについて「あれはうれしかった」と笑みを浮かべ、「自分がどこにいるのか、上から見ることで見えてきたのでは」と語った。
各務原市高校生美術展は同市那加雲雀町の各務原特別支援学校屋内アリーナで開かれる。ワークショップの作品も展示する。










