昨夏の東京五輪で新種目に採用され、注目を集めた「スポーツクライミング」。壁に設置された「ホールド」と呼ばれる突起物を頼りによじ登る。その姿はまるで「スパイダーマン」。相当な筋力や体力が必要にみえるが、初心者でも気軽にできるといううわさを耳にした。169センチ、70キロ。ダイエットのため、週に数回スポーツジムに通う程度の記者(35)でも楽しめるのか。岐阜県瑞穂市本田のクライミングジム「AIDPIT」で体験させてもらった。

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ボルダリングに挑戦

至る所にホールドが設置された店内。初心者でも気軽に競技を楽しめる=いずれも瑞穂市本田、AIDPIT

 挑戦したのは、種目の一つ「ボルダリング」。4、5メートルほどの壁に複数のホールドが設置されたコース(課題)を登る。大会では、課題を登り切った数などで順位を競う。

 見よう見まねでは、さすがに難しそう。県スポーツ協会所属で、国際大会出場や2019年の国体では優勝経験もある日比野良祐さん(24)に指導を仰いだ。笑顔が爽やかな好青年だ。
 

道具いらず、お手軽

競技用のシューズ。つま先が先細りになっている

 道具について教えてもらった。特徴的なのがシューズ。つま先が先細りになっている。「足先に力が伝わる作り」と日比野さん。競技者は、より足に力が入るよう普段の靴より小さいサイズを履くという。他には、汗で滑らないよう手に付ける「チョーク」ぐらい。道具はほとんど必要なく、とっつきやすく感じた。
 

ホールドに悪戦苦闘

ボルダリングに挑戦する記者。全身を使うため、時間がたてばたつほど腕にも足にも疲労がたまった

 早速、挑戦。あえて助言なしでチャレンジだ。壁の前で指示された課題を見ながら、登るルートをイメージする。「いけそうな気がする」。心の中でつぶやき登り始めたが、そんな思いは早々に打ち砕かれる。

 大小に加え、厚さもさまざまなホールド。手や足をひっかけることが難しい箇所もある。サイズが大きくても手や足がかけられないと、握ったり、踏ん張ったりとより力が必要になる。「想像以上にきつい」。そう思っている間に、ホールドをつかみ損ね落下した。
 

手や足がぷるぷる


 納得できず、再挑戦。1回目より上部にたどり着いたが、早くも体が悲鳴を上げ始めた。一刻も早くゴールにたどり着きたいが、手や足の運び方が分からず立ち止まる。粘れば粘るほど、腕や足は疲弊。前腕、太ももはぷるぷる震え始めた。スタートから1分を超えたころ、結局、落下。大して動いていないのに全身に汗がにじんだ。
 

〝完登〟ならず

落下する記者。何度も挑戦するも最後まで「完登」できなかった

 お手本を見せてもらった。日比野さんは壁への体の向け方や足の運び方を説明しながらゴール。その間、わずか30秒。顔色一つ変えず、むしろ笑顔だ。

 アドバイスに従い、その後も数回挑戦。体力はあるのに、筋力がついてこない。やればやるほど疲労がたまり、最後まで「クリア」できなかった。「初心者には少し難しい課題だったので」。日比野さんの慰めが心に染みたが、短時間でも全身を使い楽しめたという充実感は大きかった。
 

体も頭も心も鍛錬

リードの模範演技を披露してくれた日比野良祐さんの7メートルほどの高さからの眺め。大会では、この倍ほどの高さまで到達するという

 「体と頭と心が鍛えられる」と競技の特性を説明する日比野さん。「初心者や趣味で登る人であれば、筋力より、いかに体を上手に動かすかが重要」とコツを説明する。スムーズに登るためや体格に合ったルートを瞬時に考える頭脳が、攻略の鍵になると感じた。

 スポーツクライミングは速さを競う「スピード」と、制限時間内に到達した高さで争う「リード」もある。五輪では計3種目の複合で行われ、日本勢は女子が2位と3位に。過去の世界選手権では優勝した選手もおり、日比野さんは「日本は世界でもトップレベル」と教えてくれた。
 

年齢問わず楽しめる

スポーツクライミングの魅力を語る日比野良祐さん。「いろんな世代の人に楽しんでほしい」と呼びかけた

 小学2年で競技を始めたという日比野さん。「入学前に始める子もいて、小さいお子さんから大人まで楽しめる。カップルで楽しむ人もいますよ」と話す。

 体験できる場所は県内でも年々増えているといい、岐阜市や各務原市、大垣市など各地にジムがあるという。「動ける格好で立ち寄ってみてほしい。いろんな世代の人に楽しんでもらいたい」と呼びかけた。

 玉田健太(たまだ・けんた) 2009年、15年に入社。いわゆる出戻り記者。遊軍、西濃支社、岐阜市政、羽島支局、整理部、警察、運動担当などを経て、今年10月からデジタル報道部。スポーツは、やるのも見るのも大好き。この2年ほどは特にフィールドホッケーにはまっている。岐阜市出身。