「あなたの古里の郷土料理はなんですか」。年の瀬も近づき、久しぶりに実家に帰省する人も多いのではないだろうか。今年本紙に入社した記者は、岐阜県内の郷土料理を取材する機会が何回かあった。「何品か作れるようになりたい」と、記者の実家・加茂郡東白川村に暮らす祖母(85)に教えてもらった。今回習うのは「にごみ」と「いももち」。祖母の昔話を聞きながら作る郷土料理は格別だった。(桂川景)
古里でよく食べられる「にごみ」
にごみは、中濃地方の郷土料理で、正月や冠婚葬祭などでよく食べられている。ゴボウやニンジンなどをしょうゆなどで煮込む。「けんちん汁」にも似ている。東白川村越原の道の駅「茶の里」には、「にごみうどん」が売られており、訪問客は野菜たっぷりで温かい汁で心と体を温めている。
にごみの作り方は簡単で、鶏肉とゴボウ、ニンジン、こんにゃくなどをそれぞれ1センチほどの大きさに刻み、しょうゆと和風だしで味付けしてじっくり煮込む。祖母は水もしょうゆの量も目分量。「いつも目分量なの?」と聞くと祖母は大きくうなずいた。いちいち計量カップで量らずとも、そのときの感覚とタイミングでピシッと味を決められるのだろう。
にごみのポイントは切り方にある。正月のにごみは、具材を立方体の形に切らずに、斜め切りにする。祖母によると、「真四角はお葬式なんかのとき。正月は、縁起が悪いから四角形には切らない」とのこと。少しでも縁起の悪いものは除くという先人の思いが表れている。
「熱くないの?」「そりゃ熱いさ」
次にいももち。いももちは、炊いたもち米といもをつぶして小判型にし、それを焼いてしょうがじょうゆだれに付けて食べる。いもの粒が残るいももちの食感と、甘辛いしょうがしょうゆ。これがたまらなくおいしい。
しかし、実際に作ってみると、小判型に形成するのが意外と難しい。炊きたてのうちに握るので、熱くて餅を握ることができない。隣を見ると、祖母はひょいひょいと握って見せた。「熱くないの?」と聞くと「そりゃ熱いさ」。握り終わった後、2人の手は真っ赤だった。
祖母が作りながら教えてくれた。いももちは、米が貴重な食料だった食糧難の時代、不足していた米の代わりにつなぎとしていもを使用したことが始まりだと。祖母が幼いころは、子どもたちのおやつとして親しまれていたのだとか。祖母は「いももちを食べると実家を思い出す」と話した。
「正月といえば、この料理」
県内には、正月に食べられる郷土料理が多くある。下呂市などの郷土料理「ねずし」は、塩でもんだダイコンとニンジン、塩マス、白米を混ぜ合わせて2週間から20日間漬け込む。「ねずしがないと正月が来た気がしない」と言われるほど、長年家庭で親しまれている。「大歳のごっつぉ」は、ダイコンやニンジン、糸昆布などをだしと調味料で煮た料理で、県内では広範囲の地域でよく食べられているという。郷土料理にかかわらず、どの家庭にも「正月といえばこの料理」という1品があるのではないだろうか。
取材を終えて
祖母に「料理を教えて」というと、快く受け入れてくれた。帰りが遅い両親の代わりに、毎晩夕食を作ってくれた祖母の背中を思い出す。野菜たっぷりのにごみはまさに「祖母の味」。コンビニ弁当や外食ばかりの現在と比べると、野菜だけでおなかを膨らましていた幼少期が遠い昔に感じる。祖母も今年で85歳になった。次実家に帰ったときは、今回習ったにごみといももちを振る舞おうと思う。






