母馬ミンナノアイドルと誕生したばかりの子馬(パカパカ工房提供)
放牧に出され、母ミンナノアイドルに寄り添う愛らしい子馬(パカパカ工房提供)
ミンナノアイドル(受胎後)と牧場を管理する佐藤信広さん
ほほ笑ましい表情を見せる母子(パカパカ工房提供)
中央で3勝を挙げている兄ストリートキャップ

 オグリキャップ最後の産駒ミンナノアイドル(牝10歳、芦毛)が20日、芦毛の男の子を出産した。父はゴールドアリュールで、兄ストリートキャップ(牡5歳)と同じ配合。すくすくと成長して、将来は祖父オグリキャップが果たせなかった夢舞台「日本ダービーへのゲートイン」を目指したい。

 ミンナノアイドルは中央では1戦しただけで、オグリキャップの血を継承する繁殖牝馬として、5年ぶりに出産した。ストリートキャップを出産した後は、子宝に恵まれなかったが、昨年6月に再び受胎していることが確認され、待望の次男誕生となった。父ゴールドアリュールは多くの活躍馬を送り出したが、今シーズンの種付けが始まったばかりの2月18日に亡くなっており、貴重な産駒となった。

 NHK「プロフェッショナル」のオグリキャップ特集でも紹介された北海道新冠町の佐藤牧場。出産予定日を過ぎていたが、安産祈願のお守りにも囲まれて、ミンナノアイドルは無事出産。地元の「パカパカ工房」さんを通じて、牧場代表・佐藤信広さんの喜びの声を聞くことができた。

 出産まで見守り続けた佐藤さんは「予定日から2週間ほど遅れ、心配でしたが、元気な子を産んでくれた。30分もすると立ち上がって初乳を飲むなど、健康な男の子です。5年ぶりになるが、アイちゃん(ミンナノアイドル)も子どもをかわいがって、ちゃんとお母さんを務めています」と、愛馬の誕生にひと安心。

 「顔の面影がオグリキャップに似ている。体のシルエットは兄のストリートキャップにそっくりで、活躍を期待したい。不妊や流産が続いて、獣医さんには大変お世話になりました。ファンの皆さんにも安産のお守りを送っていただくなど、いろいろと心配していただいて感謝しています」。今後については「無事に育ってくれたら、母と同じ一口馬主のクラブ(ローレルレーシング)に提供するつもりです。ファンの皆さんと、もう一度、オグリキャップの夢を追い掛けたいですね」と生産者としての気概を示した。

 馬産地の出産シーズンは終盤に入っているが、ミンナノアイドルは今年、13年ダービー馬のキズナの種付けをする予定だという。佐藤さんは「オグリの血をつないでいきたい。ぜひとも、キャップの新しい孫を見せてあげたい」とミンナノアイドルを引き取り、繁殖に力を注いできた。何とか無事に名馬キズナの子を受胎できるといいが...。

 人間からの愛情を受け止めて、「より速く走ること」を宿命づけられた競走馬。牧場、馬主、厩舎関係者たちにとっては、愛馬を日本ダービーに出走させて、「ダービー馬」の称号を獲得することが究極の目標となる。オグリキャップの子では、1995年に「長男」オグリワン(母ヤマタケダンサー)がダービーに挑戦したが17着に終わった。ライデンリーダーが挑んだ95年オークスには、芦毛のアラマサキャップ(母ユウコ)も参戦し、最後方から追い込んで8着だった。

 今回、誕生した子馬の父ゴールドアリュールはフェブラリーSを制覇し、日本ダービーでは5着だった。ダート血統ではあるが、産駒のストリートキャップは芝で3勝を挙げており、誕生した弟にもダービー出走の可能性はある。オグリキャップファンの大きな夢でもあり、まずはその第一歩を踏み出したといえよう。

 フェブラリーSなどGⅠ9勝のコパノリッキーら、ゴールドアリュール産駒の活躍は著しく、大舞台で強い父の良血が開花すればスター街道も夢ではない。ミンナノアイドルの子は、順調に育てば2年後にデビューする。中央GⅠ馬にオグリキャップ、オグリローマンの2頭が輝いたオグリの血脈は、これからもずっと受け継がれていく。(取材協力、写真提供:パカパカ工房〈Twitter@pakapakakobo〉)

 今年の日本ダービー(28日・東京、2400メートル)は大物不在で混戦模様だが、賞金の高いレース(日本ダービー・1着2億円)では、外国人ジョッキーの活躍が目立つ。ヴィクトリアマイル、オークスを制覇したルメール騎手が、レイデオロでGⅠ3連勝を狙う。4月、笠松にも参戦してくれたMデムーロ騎手は、アドミラブルに騎乗。青葉賞などダービーと同じ2400メートル戦を2連勝中で、大外18番から強烈な末脚を発揮したい。

 皐月賞1、2着のアルアインとペルシアンナイトは勝負強く、好位から抜け出しを狙う。皐月賞3、4、6着のダンビュライト、クリンチャー、スワーヴリチャードの3頭はダービーで好成績が目立つ内枠に入り、好走が期待できる。地方競馬(川崎)出身で芦毛のトラストは、捨て身の逃げで踏ん張りたい。