留学生の合格、全力応援

 少子高齢化の急速な進展で、介護業界の人手不足が深刻化していることから「日本で介護の仕事をしたい」「日本の介護を学びたい」と考える外国人にも力になってもらえるよう近年、さまざまな制度ができています。そのうちの一つが、2017年9月に在留資格に「介護」が加わったこと。留学生が短期大学や専門学校などの介護福祉士養成校で2年以上学び、国家資格「介護福祉士」を取得すれば、日本で働き続けられるようになりました。これを受け一部の介護施設では、留学生に対して在学中のアルバイト先の提供や生活の支援をしたり、卒業後もそのまま働ける体制を整えたりして、夢の実現を支えるケースも出てきました。

 とは言え留学生が、母国とは習慣の違う日本で暮らして日本の学校で学び、アルバイトをし、日本語で書かれた試験に挑むことは、並大抵のことではありません。県内の介護福祉士養成校を今春卒業した4人にこれまでの経緯や今後について伺いました。
 

 先輩留学生の存在に感謝【フェニックスグループ・中部学院大連携型3期生】

 フェニックスグループ(各務原市)では2018年度から、関市の中部学院大学と協力し、介護福祉士を目指す留学生をサポートする「事業所連携型外国人留学生受け入れ事業」を行っています。今春、同大学短期大学部を卒業した3人は3期生にあたり、この3人を含めてこれまでに9人のベトナム人の勉強とアルバイトの両立を支えてきました。

中部学院大学とフェニックスグループが協力し、介護福祉士を目指す留学生をサポートする「事業所連携型外国人留学生受け入れ事業」の3期生の3人。今春、中部学院大学短期大学部を卒業し、フェニックスの施設で働く

 3期生のファム・ティ・タイン・チュックさんとグェン・ティ・ホアイ・トゥインさん、グェン・ティ・ダオさん(いずれも26)は、母国でそれぞれ看護師や薬剤師を目指して勉強する中で日本の介護に興味を持ち来日を決意。20年4月に同大学留学生別科に入学しました。しかし新型コロナウイルスが急拡大した時期と重なり、8カ月間はベトナムからオンラインで授業を受けていました。来日してから短大を卒業するまでの2年4カ月の間、フェニックスが運営する特別養護老人ホームDANKE内にある住居部分で共同生活を送りながら、DANKEや近隣施設でのアルバイトと勉強の両立を図ってきました。

 3人は「コロナ禍で来日が遅れたこともあり、短大に入学するときは日本語がまだまだで、授業もアルバイトも大変でした」と振り返ります。それでも日本人の学生と交流したり、アルバイト先でも職員から一つ一つ丁寧に仕事を教わったりするうちに、言葉の壁をクリアし、介護の知識を深めていきました。

 また大きかったのが1期生、2期生の存在。先輩6人全員がグループ内で現在も働いており、仕事でもプライベートでも力になってくれたといいます。

 介護福祉士国家試験は、チュックさんは合格、トゥインさんとダオさんはあと一歩及びませんでした。2人は本年度、再受験する予定で、フェニックスグループが働きながら国家試験合格を目指す職員に向けて毎年開いている直前講座を受けるなどして対策していきます。

 3人とも今後の夢は同じで、それはベトナムに介護施設を造ること。10~15年は日本の現場で働きながら知識と自信を身に付けていく予定です。
 

 介護福祉士に一発合格【サンビレッジ国際医療福祉専門学校卒・ディパさん】

 瑞穂市のサンビレッジ瑞穂の特別養護老人ホームとショートステイで働くネパール出身のスレスタ・ディパさん(26)は、母国で検査技師として働いていて、医療や福祉に興味があったことから2019年に来日。「幼馴染のお姉さんがすでに日本へ行っていて、良いところだと聞いて日本で働くことを決めました」と振り返ります。日本語学校を経て21年に揖斐郡池田町のサンビレッジ国際医療福祉専門学校(通称・サンビ校)に入学しました。同時にサンビレッジ瑞穂でのアルバイトも始めました。

今春、サンビレッジ国際医療福祉専門学校を卒業し、サンビレッジ瑞穂で働くスレスタ・ディパさん。本人の努力はもちろん、施設や学校のサポートのおかげで、介護福祉士国家試験に一発合格した

 ディパさんの学年は18人の留学生がいたことから放課後に日本語の授業がありましたが、日中のカリキュラムは日本人学生と同じ。初めは授業についていくだけで一苦労だったと言います。そんな中、力になったのがアルバイトで、利用者や職員と会話を重ねたり、介護記録に気付いたこと等を一日一つ以上書く習慣をつけたりして、技術と語学力を伸ばしていきました。

 今年1月に受けた介護福祉士国家試験に向けては、学校で放課後も長時間勉強したり、休みの日でも電話で先生に質問したりして直前期には手応えを感じるほどに。高得点で合格することができました。

 施設や学校のサポートも力になったと言います。サンビ校では、留学生がアルバイトする各施設と密に連絡を取り、アルバイト先での業務の進捗状況を聞き取ったり、実習等のスケジュールを施設側に伝えたりしてフォロー。施設ではディパさんが困っていたら、その場でお手本を見せたり、しっかりと説明したりして支えました。

 晴れて卒業して4月からは正職員として働くディパさん。「先月から担当を持つようになったので、利用者の家族と連絡を取ることが増えました。日常の細かな気付きを電話で伝えるなどを重ね、信頼関係を作っていきたいです」と話します。その先の目標は、ネパールに介護施設を造ること。「日本に来て初めて認知症について知りました。ネパールではまだ介護という概念がありませんがいずれは必要になるでしょう。その時、ここで学んだことを生かしたい」と目を輝かせます。