関本玲花騎手の笠松初勝利を祝ったセレモニー。佐藤友則騎手がプラカードを持ち、盛り上げてくれた

 男性ジョッキーたちを従えて、かれんな少女がスイスイと逃げ切った。冬季休業中の岩手競馬から、笠松競馬の湯前良人厩舎に所属し1カ月余り。関本玲花騎手(19)はファンの熱い視線を浴びながら、笠松で4勝、名古屋で1勝を挙げる活躍を見せて、21日までの期間限定騎乗を終えた。

 昨年10月に岩手競馬でデビュー。地元では109戦して2勝と思うように勝てなかったが、東海地区では62戦5勝と、大健闘といえる成績だった。期間中には「歓迎」「笠松初勝利」「お別れ」とセレモニーが3回も開かれ、大勢のファンと交流。笠松競馬のムードを盛り上げてくれた関本騎手に期間限定騎乗での思いを聞いた。

 ―笠松競馬で勝利を積み重ねましたが、その結果についてどうか。

 うれしいです。湯前厩舎に所属して、勝たせてもらってありがたいことです。

 ―期間中、笠松の競馬には慣れましたか。3勝目までは逃げ切りでしたね。

 乗りやすくて、コースにも慣れました。逃げ切れたのは、意識したわけじゃないけど、やっぱり減量(新人女性騎手として4キロ減で騎乗)が効いていたのかも。初勝利のナイトキャップでは、指示通りに前へ行ってそのまま勝てました。
 

期間限定騎乗に挑み、笠松で4勝を挙げた関本騎手。プティドバトゥに騎乗して2勝目を飾った(笠松競馬提供)

 ―2勝目は世話になっている湯前厩舎の馬で、360キロと軽量のプティドバトゥでしたが。

 勝てるとは思わなかったが、1400メートル戦で距離的にも良く、先行できた。2番手につけようとしたが、(馬の気合乗りも良くて)前へ行っていいかなあと。横には大畑雅章騎手がいましたが、そのまま先頭に立った。2コーナーを回っても後ろからの足音も聞こえなくて、逃げ切れるかなあと。
 
 ―3勝目は大逃げになったが、1番人気のランタンに騎乗して、プレッシャーもあったのでは。

 前へ行き過ぎて、最後はバテましたがなんとか残ってくれて良かった。

 2勝目を飾った直後には、タイミング良く初勝利セレモニーもあった。佐藤友則騎手がプラカードを持って付き添い。関本騎手は受け取った花束をファンにプレゼント。サインや記念撮影で交流した。次のレースも迫り、「あと2人に」との広報さんの声に、佐藤騎手がファンサービスに努め、「僕はマネジャーですから。玲花、急いで」と、全員がサインをもらえるようにしてくれ、詰め掛けたファンを喜ばせた。「笠松の顔」として盛り上げてくれ、頼りになる佐藤騎手だった。
 
 ―笠松競馬場の雰囲気や先輩たちはどうでしたか。

 明るいです。先輩たち、冗談を言い合って、攻め馬とか普段からワイワイしていて...。

 ―地方競馬教養センターで、関本騎手の半年後輩だった深澤杏花騎手候補生(18)が、4月に笠松競馬でデビュー予定です。エールをよろしく。

 今は特に連絡を取ってはいませんが、実習経験から「笠松はいい所だよ」と所属を勧めました。デビューしてみると、思っていたようにはいかないが、杏花なら、うまいと思うんで頑張ってほしい。

パドックで笑顔を見せる関本騎手

 ―笠松競馬の関係者は、玲花・杏花の「花・花」コンビで、盛り上げたいとも。来年も期間限定騎乗で笠松に来てくれますか。

 けがなどしないようにして、できればまた来たいです。笠松では先輩たちがゲートの出方など教えてくれたりして、乗りやすかったです。

 ―レディスヴィクトリーラウンドでは、22日に佐賀ラウンド、3月12日には最終の名古屋ラウンドに参戦しますが、意気込みを。

 佐賀は「コース的に乗りづらい」と渡辺竜也騎手が言っていましたが、どうかな。名古屋は何回も乗せてもらってコースに慣れているんで、うまく乗れるように頑張りたい。

 ―岩手で待っているファンへメッセージを。3月20日に地元・水沢でレースがスタートしますね。

 春競馬が始まったら、今まで以上に頑張りたいです。笠松で騎乗技術も向上したと思うので、岩手のファンが、成長したところを見てくれたら、うれしいです。

若手騎手、候補生とともに馬具の手入れなどを行う関本騎手

 ―笠松のファンにもひと言。

 これしかないかな、「好きです 笠松競馬」ですね。(今年、笠松重賞を連勝した)園田の鴨宮祥行騎手も言ってましたからね。

 笠松ラストとなった21日には、1Rで4勝目を飾った。ピコリーナ(尾島徹厩舎)に騎乗し、これまでとひと味違うレース展開。3番手から追走し、4コーナーで先頭に立って差し切り勝ち。ハナ差惜敗もあった尾島厩舎の馬で勝てて、ホッとしていることだろう。笠松では覚えることがいっぱいあったし、まだデビュー5カ月目の見習騎手でもあり、自分のレース終了後には、笠松若手の東川慎騎手や騎手候補生とともに、先輩騎手の馬具の手入れなどにも励んでいた。

 レディスヴィクトリーラウンドでは、名古屋競馬の先輩で笠松でもおなじみの宮下瞳騎手や木之前葵騎手とも対戦。昨年女性騎手トップの67勝を挙げてNARグランプリ2019の優秀女性騎手賞を受賞したのが木之前騎手。昨年、関本騎手ら女性ジョッキー3人がデビューしたことついては「この子たちが、どのように成長していくのか、楽しみですね。応援したくなります」と、受賞の喜びの声とともに、成長を期待していた。

東海クラウンを勝ち、笠松での活躍も光る宮下瞳騎手

 宮下騎手は13日に名古屋重賞・梅見月杯をポルタディソーニで逃げ切りV。笠松でも20日の東海クラウンを勝つなど、騎乗機会3連勝と好調。「馬の調子が良くて、そのおかげですね。昨年は笠松ではあまり勝ってないので(18戦して2勝)」と話していたが、最近の騎乗ぶりは、男性陣を圧倒する勢いで本当に素晴らしい。関本騎手にとっては、憧れの存在である木之前騎手や、女性騎手最多勝記録を更新中の宮下騎手と、同じレースで騎乗できることは、大きな刺激を受けることにもなる。

 お別れセレモニーでも、笠松に戻ってくることには「もちろん」と答え、「短かったですが、すごく楽しかったです。先輩たちが優しく教えてくれて、下手くそな私でも、技術が少しは向上しました。馬主さんや調教師の先生たちのおかげで、たくさん勝つことができました。岩手に帰ってからもここで学んだことを生かして頑張りたいです」と意欲を見せていた。

 レディスヴィクトリーラウンドは将来、笠松ラウンドが開かれることもあるだろう。現在、男女混合のレースで開かれているが、その頃には女性ジョッキーがもっと増えるはず。木之前騎手が提案していたように「オールレディース」で腕を競えるといいが...。

 関本騎手の岩手での飛躍と、晴れて地方騎手免許を取得した後の「深澤騎手」の笠松デビューを楽しみに待ちたい。