社会福祉法人新生会が運営している揖斐郡池田町のサンビレッジ国際医療福祉専門学校(通称・サンビ校)は、介護福祉学科、作業療法学科、言語聴覚学科の3学科を設置。系列施設を“第2の校舎”、施設利用者を多くの気付きを与えてくれる“先生”と位置付け、実習時はもちろん通常の授業においても施設と連携を図り、利用者の協力も得ながら、学生に実践力を身に付けてもらう教育を行っています。

スマートグラスや電子黒板を自在に

 そんなサンビ校では昨年度から、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、より深い学びにつなげられるようさまざまな取り組みを行っています。その一つがスマートグラス(映像と音声を同時に送信できるメガネ)の活用です。映像はホワイトボードなどに映し出して学生と共有しています。系列施設で専門職に装着してもらい、送られてきた映像を教室で見ながら授業を進めるという使い方をすることもあります。電子黒板も導入し、授業に動画を用い、ポイントとなる部分に教員が印を書き入れたり、手書きのレポート等を映し出して共有したりと活用しています。教員からは「これまではベッド等の後ろに学生に来てもらって見本をしていましたが、立つ場所や角度によって見えにくいということがありました。スマートグラスの活用で、全員が細部までしっかりと見えるようになりました」「どこに視線を送って利用者の状態を把握しているかを伝えやすくなりました」などの声があがります。

教員が見本をする場合などにスマートグラスを着用し、映像をホワイトボードに投影することで、どこを見て、何に注意を払っているかを伝えやすくなった
電子黒板(右)の導入により、学生が書いたメモやレポートを拡大して映し出すことが可能に。全員で深い議論をする際などに役立っている

学生のカルテ導入

 また、医療機関の「電子カルテ」を応用した「学生のカルテ」を地元企業と共同開発し、本年度から本格導入しました。これまでは、成績や出欠などそれぞれの情報が書かれた紙を別々に保管しており、学生の全体像をつかみづらいという問題がありましたが、カルテで管理することで成長の過程が分かり、一人一人の学生の応じた最適な学びの提供がしやすくなりました。

 介護福祉学科1年の田代渉太郎さんは「介護福祉士は働きながらでもなれますが、しっかりと学びたかったためこの学校に入学しました。最先端の教育のおかげもあって理解しやすい。これからも一人一人の思いに寄り添える介護福祉士を目指して頑張りたいです」と話しています。

地域住民と関わり気付き得る機会に

 地域に向けた取り組みも強化。これまでも施設の利用者との交流の機会は多くあったものの、介護が必要になる前の高齢者と接する機会はあまりありませんでした。そこで介護福祉学科では昨年度から、NPO団体が行っている介護予防教室に参加。地元の高齢者と交流したり、自分たちで考えたレクリエーションを実践したりしています。1年生の中元飛佑さんは「家族以外の元気な高齢者と関わる機会はないので貴重。地域の方と関わることで、自分の知らない知識を持っていること、考え方が違うことを感じることができました。介護福祉士を目指す中でプラスになったと思います」と話しています。