今月で創設から100周年の節目を迎えた穂高岳山荘。数年前に登山を始めた記者(27)が山の日である今月11日、長野県松本市の涸沢から登った。

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石畳のテラスでは多くの登山者が一休みしていた

 辺りがまだ薄暗い午前4時30分、涸沢小屋を出発。明かりがともり出したテント場を抜け、緩やかなガレ場を歩き始める。5時ごろ、朝日で山肌が染まる「モルゲンロート」に立ち止まる。登山道はまだまだ人が少なくしんと静か。近くには雪も残っている。

午前5時ごろ、朝日で山肌が染まる「モルゲンロート」が見えた

 6時20分、ドイツ語で「支稜線(りょうせん)」「支尾根」などを意味するザイテングラートの入り口に着いた。そり立つ岩々を見上げ「こんなところ歩けるんだろうか」と不安になる。岩にしがみついて慎重に登っていると、下山してきた小学校低学年くらいの男の子と家族が、元気よく「こんにちは」とあいさつしてくれた。鎖とはしごの箇所も無事に通過し、8時20分「ホタカ小ヤ20分」とペイントされた石を発見。視線を上げると山荘の赤い屋根が見え、足が軽くなった気がする。

午前6時40分、険しい岩がそり立つザイテングラートに到着
鎖を使い、慎重にザイテングラートを登る

 9時、最後の石段を登って山荘に到着。険しい稜線上とは思えない、開けたスペースに驚く。下山を控えた宿泊者や、西穂高岳へ向かう登山者など多くの人が腰をかけ、一休みしている。登山道と同様、日本語以外のおしゃべりも聞こえてくる。石畳のテラスに立つと眼下には雲と山々が広がり、長い道のりの疲れも吹き飛ぶ。隣りで休んでいた埼玉県からの女性は「ずっとこの景色が憧れだった」と目を細めた。

眼下に雲を望む、石畳のテラス

 山荘主人の今田恵さん(38)によれば、コロナ禍を経て海外からのお客さんが増えているという。「『こんなすてきな場所があるなんて』と言ってもらえるのが、本当にうれしい。これからも登山者を手助けする存在でいたい」と力を込める今田さん。吹き抜けで開放感のある食堂で冷えた乳酸飲料をごちそうになると、一気に体力と気力が回復し、上高地まで無事に下山できた。〝手助け〟の力を実感した登山だった。