「他とは違うアイテム、役割を考えていく」と語る駅長の名畑和永さん=郡上市明宝、道の駅「明宝」
地域活性化のための理想的な運営で視察が絶えない「おばあちゃん市・山岡」=恵那市山岡町

 幹線道路沿いに突如現れるドライバー憩いのスポット、道の駅。岐阜県の施設数は、ダントツの北海道に次ぐ56カ所を数え、いわゆる「道の駅先進県」だ。国土交通省による1993年の第1次登録で県内から5カ所が認定されると、見る見るうちに増えた。その一方で悩みもまた深い。多くは赤字経営で苦しんでおり、魅力アップに苦心している。

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 県によると、ここまで増えたのは、広い県土と、1世帯当たりの自家用車保有台数全国7位、1・596台(自動車検査登録協会、2016年)という車社会が考えられるという。135施設でつくる「中部ブロック道の駅連絡会」によると、岐阜県内の市町村が一時期、文化発信の拠点、通過点ではなく目的地、つまり観光地にしようとこぞって設置したことも影響しているという。国などの手厚い助成金制度を活用できたのも拍車をかけた。

 56カ所のうち最も古いのは、1989年にまずドライブインとして整備された郡上市明宝の道の駅「明宝」だ。合併前の旧郡上郡明宝村の高田三郎村長(故人)が観光立村を掲げ、当時人気のドライブインを村南部の田んぼの一角に計画した。源平合戦の名馬の誉れ高い地元産の馬の名から取った「磨墨(するすみ)の里公園」として開業した。その後、国交省による道の駅第1回登録で指定された。2015年には同省の「重点道の駅」の一つに指定された。

 特産品「明宝ハム」のメーカー、明宝特産物加工(郡上市明宝)の子会社、明宝マスターズが開設当初から運営に関わり、現在は指定管理者として駅全体の経営に関わる。駅長、マスターズ社長で明宝特産物加工の名畑和永専務(58)は「これだけ道の駅がある時代なので、他とは違うアイテム、役割を考え、差別化を図っていかなければ」と生き残り策に苦心する。大手スーパーとは一線を画す、限定販売の高級明宝ハムなど各種商品、名物のケチャップをはじめ、昔ながらの漬物、プリンなど多彩な商品が並ぶ。

 巨大な水車が目印の、恵那市山岡町の道の駅「おばあちゃん市・山岡」は来場者数が県の観光動態調査でも県内の観光施設で例年上位に入る。コロナ前の19年は58万9950人と高い水準だった。常に品切れさせない季節の野菜の直売が売りだ。先代の駅長がトヨタの「カンバン方式」さながらにジャストインタイムの仕入れ方法を発案。売り上げ規模は年2億円超と全国的には平均的だが、幹線道路から外れた立地ながらリピーターが絶えない。地域の活性化拠点という理想的な運営が光り、国内外からの視察が多い。

 しかし、別の問題も浮かび上がっている。平成の大合併の名残で、一つの自治体に複数存在するケースがみられることだ。大垣市や多治見市など空白地もある一方で、郡上市は8カ所、高山市にも8カ所、下呂市には3カ所存在する。どこも似たつくりのため、同じ自治体の中で客を奪い合っている可能性もある。

 道の駅に詳しい法政大名誉教授、同大地域研究センターの岡本義行特任教授は「政府の政策としては珍しく成功した。理由の一つは多様な施設を(国交省以外の)他省庁の補助金も使って併設できることにある。地域の工夫でパン店やお化け屋敷を設けることさえも可能だ。地域活性化の切り札でもあるが、現実には多くの道の駅と設置者の自治体は赤字に悩んでいる」と慢性的な経営難を懸念する。道の駅大競争の時代、誘客のアイデアが駅の浮沈を分けそうだ。