少子化や大学入試改革で今、高校を取り巻く環境は大きく変化しています。岐阜県内の高校はどう対応していこうとしているのでしょうか。岐阜新聞デジタルは各校の校長らトップにインタビュー。学習方針や進路対策、キャリア教育について考えを聞きました。第4回は中津高校(中津川市)の市川浩通校長(59)。来年120周年を迎える伝統校は定期テスト、提出課題を全廃しました。それで成績は上がったといいます。学校改革真っ最中の中津高校、何が起きているのでしょう。

 中津高校 来年度に創立120周年を迎える、県立の単位制普通科高校。所在地は中津川市中津川。各学年の定員は200人。
中津高校=中津川市中津川

 ―中津高校を取り巻く環境は。

 恵那地区は少子化が非常に進み、この5年ほど、本校を含め多くの高校が定員を満たしていない。大きな私立高校も東濃圏域内にあり、定員割れに拍車をかけている。

 本校は進学校を目指す地域の2番手校だが、コロナ禍のころ進学指導に熱の入った時期があった。ただ、コロナ禍が影響したのかもしれないが、転学、退学していく生徒が何年か連続して年間2桁になるなど多くなった。公立高校としてよくない傾向だと受け止め、教育方針を変更した。

 ―どのように。

 生徒中心の指導。学校や教員の価値観を押しつけないようにした。定期テストや提出義務のある課題を基本的に全廃した(提出義務のない課題はある)。

 期限が決まって提出義務のある課題は本来、生徒に1日2、3時間の勉強をさせるためのもの。だが、学習習慣のない生徒もいる。本校は定員割れとなっており、生徒の学力は非常に幅広い。難関国立大を狙える生徒もいれば、地元で就職希望の生徒もいる。したがって一律の課題、定期テストを行っても全員を評価できない。成績上位の生徒にとっては簡単でも下位の生徒にはついていけない内容になってしまう。

市川浩通校長

 進学指導を強化していたので、テストを中位層から上に焦点を当てて作成すると、中位層より下はテストに答えられない。授業も分からない。すると勉強すること自体をやめてしまうケースが出始めた。定期テストにおける追試や再試の対象者も増え、例年4分の1ぐらいだったのがコロナ禍になるとその割合が拡大。令和3年度だと1年生の半数弱が追試再試の対象になった。これでは定期テストをやっている意味がなく、テストが機能していない。このまま続けてもよくない、それでは定期テストをやめようという結論になった。

 ―いつから定期テストをやめたのか。

 昨年度、中間テストを廃止。本年度から定期テストを全廃した。長期休暇後の課題テストもやめた。

 これだけテストをやめると、不安に思う保護者や教員もいる。中間テストをやめた昨年度は「中津高校は進学校であることをやめた」と、「細かい単元テストをやっていくので、逆にテストに追われまくる超進学校になった」という両極端なうわさが流れた。あちこちで説明したが、生徒たち自ら負担が減ったということを話してくれ、中退・転学していく生徒が大幅に減った。...