岐阜大学(岐阜市)の農場で今、不思議な出来事が起きています。黄身が二つ入った二黄卵が続々とうまれているのです。通常は1日に数個なのが、4月下旬は30個以上うまれた日がありました。いったいなぜ? 取材するとニワトリたちのある秘密が分かりました。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

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 農場は岐阜市北部の岐阜大学にあります。正式名称は「岐阜大学応用生物科学部附属岐阜フィールド科学教育研究センター」。野菜や乳牛に加え、ニワトリを育てています。

 二つある鶏舎のうち、一棟の約800羽のニワトリから生まれる卵で、今二黄卵が増えています。ある日に生まれた二黄卵と選別された卵30個を実際に割ってみると、確かに全て黄身が二つ入っていました。農場では通常1日700個ほど卵が取れ、二黄卵は1%程度といいます。なぜこんな現象が起きているのでしょう。

 
主任技師の酒向隆司さん

 「若いニワトリだからです」。農場の主任技師、酒向隆司さん(54)が教えてくれました。ニワトリは25時間周期、6日産卵して1日休むというペースを繰り返します。しかし、若いニワトリは排卵のサイクルが安定せず、短時間に二つの黄身ができてしまうことがあります。その二つの黄身を一つの殻が包むため、二黄卵になるのです。

 今、岐阜大農場で卵を産んでいるニワトリは生後5カ月ほど。「生後2日目のメスのひなを昨年の11月22日に買ってきて、育ててきました」と酒向さん。となると、800羽のニワトリは全羽昨年11月21日に生まれたということでしょうか? 「そうですね」。

 二黄卵大量発生の理由が分かりました。全羽同じ日に生まれた若いニワトリなので、二黄卵を多く産むタイミングが重なっているのです。

 ですが、なぜ同じ日に生まれたニワトリをそろえて飼っているのでしょう。そもそも800羽も同じ日に生まれたニワトリを集めることができるのでしょうか?

岐阜大学農場の鶏舎

 そこには「オールイン・オールアウト」という飼育方式が関係しています。これは、鶏舎にいるニワトリを一斉に出し、消毒を施した後に、同じ日に生まれた新たなニワトリをまとめて導入する方法。病原菌や寄生虫のリスクを減らすためと、成長がそろって管理しやすくするためです。

 ニワトリも、卵を一時的に冷やして保存し、タイミングをそろえて温めることで、同じ日にふ化させる技術が使われています。

 他の養鶏場でも二黄卵が増えるピークがあるのですが、二黄卵だけ流通させることは簡単ではありません。卵の規格はSS(40~46g)、S(46~52g)など重さで決まっています。二黄卵は一般的に70g以上と大きすぎて規格外。しかも、二黄卵だけを選別して販売するには手間がかかるうえ、需要も限られるため、通常は加工用(液卵など)として流通させるそうです。

 もちろん、食べても安全で、味は通常の卵と変わりません。

割った二黄卵は目玉焼きにしてサンドイッチに。農場スタッフや学生さんといただいた。

 そんな希少な二黄卵ですが現在、岐阜大学農場の販売所で1個30円で売っています。ニワトリは生後6カ月ほどで排卵サイクルが落ち着いてくるため期間限定ですが、興味のある方は今のうちに足を運んでみては。農場で育てた野菜や果物、実習で作ったジャムなども販売しています。(取材・文 馬田泰州)

二黄卵(左)と通常の卵

販売日:月・水・金曜日(祝祭日を除く)
販売時間:11:00~14:00
販売場所:柳戸農場フィールドセンター管理棟1F
電話番号:058-293-2978(対応時間 10:00~16:00)