社員の声から分析。男女問わず本当にフラットな職場とは?

2025年4月30日
オープンワーク株式会社

OpenWork「働きがい研究所」調査レポートvol.132

男女間の待遇満足度のギャップが少ない企業ランキング ―社員の声から分析。男女問わず本当にフラットな職場とは?―

男女間の賃金格差は喫緊の社会課題です。政府は2026年度に賃金格差の実態把握のための新組織を新設する※1など、男女の格差是正に向けた様々な取り組みを進めています。男女の年収ギャップに関する議論はここ数年で加速しましたが依然、日本は世界水準と比べても賃金格差が大きい傾向※2にあります。
2023年には従業員301人以上の上場企業を対象に男女賃金差を含む人的資本指標の開示が義務化されるなど、性別に関係なく活躍できる環境整備は企業経営戦略上、避けて通れない課題です。一方、人事制度や報酬制度の整備は進んでいても、実際に「働く人自身」がどう評価しているのかはなかなか可視化されにくい側面があります。
そこで、今回の調査レポートでは、社員・元社員が自社について回答した「待遇面の満足度」スコアの男女差を分析。社員から見て、待遇面の満足度が高く男女間のギャップが少ない、フラットな企業をランキング化しました。また、年齢別の待遇満足度にも着目すべく、若手層(25〜30歳)と中堅層(31〜49歳)の年齢層別の分析を行い、キャリアステージによる違いも明らかにします。
※1)日本経済新聞2025年 4月13日記事「男女の賃金格差把握へ新組織 首相、女性起業家と面会」
※2)日本経済新聞2025年 3月17日記事「男女の賃金格差、24年は最小 正社員での就労が進展」

 
【サマリ】
■ 若手層の男女で待遇満足度ギャップが少ない企業は、男女関係なくガツガツ働ける・横並びの給与体系が特徴
■ 年齢を重ねても男女間のギャップが少ない企業は、勤続年数に依存しない評価制度×男女平等文化の浸透 が特徴
■ 年齢関係なく男女間のギャップが大きい企業はアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)も一因か

※詳細は以下または「働きがい研究所」にてご確認ください。https://hatarakigai.openwork.jp/

 

【若手層分析】男女関係なくガツガツ働ける・横並びの給与体系がギャップの少なさの鍵

まずは2530歳までの「若手層」の男女に限定して待遇面の満足度スコアを比較することで、差が少ない企業を分析しました。男女どちらかに偏ることなく、スコアの差(絶対値)が小さい企業を上位に並べています。1位はシステム開発を手がける伊藤忠テクノソリューションズ、2位 にKPMGコンサルティング、3位にアクセンチュアとコンサルティング業界が続きました。ランキング全体では、メーカー企業が12社ランクインと最多、ITインターネット業界と総合商社はともに4社ランクインしました。

 
ランクイン企業の若手社員のクチコミからは、男女関係なくガツガツと働ける環境である・若手のうちは同期と給与が変わらない、といった声が見られました。「中堅層」(31〜49歳)よりもライフステージの変化がまだ少ない若手層は、年功序列的な横並びの昇給から自然発生的に生まれるフラットさ・ギャップの少なさを感じているようです。

OpenWorkに投稿された、若手社員が感じている男女差・給与に関する声

「男女で何か待遇や人当たりが異なるということはないため、『女性だから」という理由で働きやすさや働きづらさを感じたことはあまりない。(SE、女性、伊藤忠テクノソリューションズ)」

「女性だからどうとかみたいなのは特に感じずフラット。ただこの会社に限らず、男女問わず心身ともに強い人が上に上がっていく。(SE、女性、伊藤忠テクノソリューションズ)」

「良い意味で、実力さえあれば男性のように働ける環境は整っている。(コンサルタント、女性、KPMGコンサルティング)」

「評価、待遇給与面全てにおいて男女平等だが、女性だからという優遇はなく、男性と対等にやっていく必要がある。男性と対等にむしろ負けないようにやっていく必要があり、それが合う女性は良いが、女性だからと言って優遇されることはない。(MR、女性、アストラゼネガ)」

「新卒採用で入社した社員は基本同じポジションからスタート。多少ボーナスで結果が反映されるようになったが基本的には似たような年収になる。(営業、男性、三菱商事)」

 

年齢を重ねても男女間のギャップが少ない企業。勤続年数に依存しない評価制度×男女平等文化の浸透が鍵

続いて、キャリアステージの変化も確認すべく、「若手層(25〜30歳)」と「中堅層(31〜49歳)」のそれぞれ男女別の待遇面の満足度スコア差を算出。その差を比較することで、年代の違いを経ても男女間でスコア差が少ない企業を分析しました。1位は求人検索エンジンを展開するIndeed Japan、2位にメルカリとなり、ITインターネット業界はTOP2を占めました。ITインターネット業界は、若手ランキングでは4社にとどまりましたが、本ランキングでは2倍の8社ランクインと最多業界となりました。3位はアビームコンサルティングがランクインし若手ランキングにて3位だったアクセンチュアをはじめコンサルティング業界は3社、総合商社は4社ランクインしました。メーカー企業も根強く、本ランキングでも7社がランクインしました。



ITインターネット業界では、Indeed Japanやメルカリ、MIXI、IBM、グーグル、日本マイクロソフトなど、中途採用文化が根付く企業が多く、前職給与を基準に待遇が決まるため、勤続年数に応じた昇給(年功序列)の影響を受けにくい構造にあります。ライフステージの変化に伴う勤続年数の差が男女差に繋がりにくい点も、年齢問わず男女間でのギャップの少なさに寄与していると考えられます。
実際、ランクイン企業の中堅層(31〜49歳)にあたる社員の声を見ていくと、年功序列も男女差別もない実力主義、定量評価制度である・女性のキャリアアップや管理職が当たり前の社風である様子がうかがえました。
また、メルカリの社員クチコミでは、実際に男女格差を問題視し是正アクションが社内で敢行されている様子がありました。公平性のある評価・昇進制度やダイバーシティ施策が、形式にとどまらず社内文化として根づいている企業では、年齢を重ねても男女の待遇ギャップが生じにくいようです。

OpenWorkに投稿された、中堅社員が感じている男女差・給与に関する声

「全て定量評価。数字の達成により給与が変わるためそれを良しとする人にはとても明瞭な評価体制かと思います。外資らしい給与制度です。(営業、女性、Indeed Japan)」

「インクルーシブな会社なので、男女の間での不当な報酬格差がない様に調査が行われている。前職の給与を元に入社事の給与を決めていた事により、女性の給料が低い事がわかり、是正が行われた。(エンジニア、男性、メルカリ)」

「女性にとって働きやすい制度が充実していると思う。男女比では男性の方が多いが、実力主義なのでバリバリ活躍されている方も、どちらかというと子育て優先で働かれている方もいて、ロールモデルも見つけやすい。(シニアコンサルタント、女性、アビームコンサルティング)」

「宗教・性別・国籍・学歴の差別はない。フラットな関係。年功序列では無いので、昨日まで部下だった人や同僚が、上司になったりすることは普通にある。(営業、女性、IBM)」

「組織によって違いはあるだろうが、総じて女性が働きやすい会社と思う。部長職以上はまだかなり少ないが、女性管理職も徐々に増えてきた。ただし、総合職だと全国転勤対象になるので(海外はないと思うが)その点は覚悟が必要。(開発、男性、明治)」

 

年齢問わず男女の待遇満足度にギャップのある企業、“アンコンシャスバイアス”が背景か

最後に、男女間の待遇満足度の差を若手層と中堅層で比べた時にギャップの大きかった企業30社の傾向を分析します。(若手層・中堅層ともに男女スコア差が±0.3以内の企業は除外の上、若手/中堅層を比較)
若手か中堅のどちらか、またはその両方でスコアの男女差が大きい企業ほど、若手と中堅で比較した際に差が広がりランクインしやすい傾向にあります。30社中11社を占めたのは、製薬会社や電子機器、食品飲料といったメーカー企業という結果となりました。

当該企業で働いている社員の声では、長時間残業が高給に繋がる給与体系、時短勤務を選択する・海外転勤を断ると評価されにくい実態を挙げる声がありました。また、女性と比べ男性社員の方が多い企業では「男性中心」に各種制度等が設定されているという女性のクチコミも目立ちました。その一方で、当該企業に所属する男性のクチコミからは「女性は優遇されている・女性というだけで評価されている」といった男性目線の不平等さを挙げる声も見られました。男女ともに切実でリアルな声ではありますが、性別によるアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)によるすれ違い、思い込みとも言える意見もいくつか読み取れました。

今回の分析を通じ、男女間での待遇満足度における差は、年齢や評価制度といった側面だけでなく、社風や組織風土など企業文化が影響すると言えます。給与額面自体には満足していても、「男性中心だから活躍できない」「女性というだけで優遇される」といった無意識の思い込みを生みかねない企業風土は男女間ギャップを引き起こすと考えられます。企業経営において、透明性のある評価制度の整備や長時間労働依存からの脱却にとどまらず、男女年齢問わず共に働く者同士が相互理解・歩み寄れる文化を創ることが肝要です。

OpenWorkに投稿された、男女間のギャップに関する声

「長時間残業高給が世の当たり前と思っている人で占められている。(記者、男性、マスコミ)」

「女性は「育休で休んでいたから」という理由をつけ易いので昇格を後回しにされた。(営業、女性、メーカー)」

「残業が多く、働きながら結婚生活を続けるのは至難の業。上司は家庭の事情で早く帰る人のことを個人の都合だと言って評価を悪くする。(研究職、女性、メーカー)」

「女性は多いが管理職はかなり少ない。昔ながらの男性社会の影響は大きく残っている環境である。(技術、女性、メーカー)」

「比較的優遇されていると思います。評価も女性は甘く感じます。(営業、男性、不動産)」

 
対象データ】
OpenWorkに投稿された、正社員による会社評価レポートを対象とし、「25〜30歳の若手層」データ202,119件、「31〜49歳の中堅層」216,050件を集計。男女ともに一定の投稿数があり、総合評価スコア3.00以上かつ待遇面の満足度スコア3.50以上に該当する企業を対象。スコア差分は絶対値で算出した上で順位付け
※総合評価スコア3.00以上、待遇面の満足度スコア3.50以上はOpenWork上で上位3%の企業群に該当
また、「若手層・中堅層ともに男女間の待遇満足度のギャップが少ない企業ランキング」は、若手層・中堅層それぞれ、男女スコア差が±0.3以上あった企業は除外、「年齢問わず男女の待遇満足度にギャップのある企業」男女スコア差が±0.3以内の企業は除外の上で、若手/中堅層を比較



OpenWork働きがい研究所について】
オープンワーク株式会社が、働きがいの向上のために、個人・企業・社会などの視点から働きがいについて調査・リサーチを行うためのプロジェクトです。2014年3月よりスタートしました。



OpenWorkについて】
OpenWork(オープンワーク)では、実際に働いた経験に基づく「社員・元社員の声」を共有しています。企業の社員・元社員から情報を収集しているWEBサイトとしては、国内最大規模のクチコミ数と評価スコア約1,890万件が蓄積されており、会員数は約717万人(2025年3月時点)となっています。私たちは、企業の労働環境をよりオープンにしジョブマーケットの透明性を高めることで、健全な雇用環境の発展に貢献するとともに、企業と個人のより良いマッチングをサポートし、一人ひとりが自分らしく生きることを応援したいと考えています。https://www.openwork.jp/



オープンワーク株式会社 会社概要】
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資本金: 1,649百万円
上場市場:東証グロース市場(証券コード5139)