「さいはてのキャバレー」前の道路には今でも大きな亀裂が残っている=2日午後、石川県珠洲市

 石川県珠洲市の沿岸部にあり、能登半島地震の津波で損壊した「さいはてのキャバレー」と呼ばれる建物について、市民らが2日、所有者の市に対し、震災遺構として保存するよう求めた。市は港湾の復旧工事に伴い解体・撤去する方針だが、市民は「災害の教訓を後世に伝える道しるべになる」と主張している。

 建物はもともと、1970年代に珠洲市と新潟県佐渡島を結んでいたフェリー乗り場の待合室だった。航路廃止後、2017年の奥能登国際芸術祭で壁にイルカの絵が描かれたアート作品となり「さいはてのキャバレー」と呼ばれ、イベントなどで使われた。

 昨年元日の地震に伴う津波で建物は大きく損壊した。保存を要請したのは珠洲市の出村正幸さん(49)ら。取材に「解体を惜しむ市民の声が多く聞かれる。残す方法を検討してほしい」と訴えた。出村さんによると、港湾を管理する石川県などにも同様の要請を提出している。

 市によると、建物を維持すると港の復旧工事に支障を及ぼすとして、撤去を決めた。担当者は「復旧が最優先で、保存は難しい」と話している。