能登半島地震の津波で損壊した石川県珠洲市の沿岸部にある「さいはてのキャバレー」と呼ばれる建物の解体工事が来週始まることが17日、関係者への取材で分かった。災害の教訓を後世に伝える「震災遺構」として保存するよう住民が求めているが、市側は建物がある飯田港の復旧工事に支障が出るとして撤去を決めていた。
建物は1970年代に珠洲市と新潟県の佐渡島を結んでいたフェリー乗り場の待合室だった。航路廃止後にイルカの壁画が描かれ、2017年の奥能登国際芸術祭のアート作品となったり、イベントで使われたりした。
保存を訴えていた珠洲市の出村正幸さん(49)は取材に、一部の移設に向けクラウドファンディングによる資金集めを始めようとしていたと明かした上で「何とか壁だけでも保存したいと思ったが(市側は)全く譲歩してくれなかった。大変残念だ」と述べた。
建物は昨年元日の地震による津波で壁などが損壊した。周辺は近くの海岸復旧の工事用ヤードとしても使われる見通しで、珠洲市は建物の保存は困難だと指摘した。