◆株屋さん
「そういうのは、お断りするように言われていますので…」

 証券会社新入社員の営業は、飛び込みでの会社社長の名刺集めから始まる…といっても、それは筆者の時代、昭和の話です。

 外務員資格が取れるまでは、1カ月程度でしたか、来る日も来る日も軒並み会社訪問の日々でした。度胸づけもあるのでしょうが、受付でシャットアウトされるたびに、新規のお客さまを開拓する難しさと既存先のありがたさを学ぶ貴重な経験を積むことになります。
 
 毎年4月の恒例行事ということで、受付の人も「またか」という感じで、もう本当に機械的に「お帰りください」というニュアンスでした(笑)。
 もちろん、だからといってそれでスゴスゴと引き下がるかどうかは、センスの問題でもあるのですが、しかし「そういうの」っていう言い方はどうなんだ、と悶々としました。
 あとは、「先祖代々の家訓で」とか。

 とにかく、お客さま以外の方からの扱いはよくなかったです。新入社員のころは特にです。
 言外に「そんな余裕なんかないんだよ」という風のことをよく言われた気がします。

 当時の証券会社の収益の源泉は、現在とは様相が違っていて、株式取引(現物取引・信用取引)が中心というか、手数料率も高かった頃のことですし、ほぼそれでした。
 投資信託も取り扱いはしていたのですが、それほど販売額が大きかったわけではありません。
 すなわち、こちら証券会社ですと名乗った途端に電話をガチャンと切られるか、「ああ株屋さんね」と言われるかの、そんな時代でした。
 つまり、株式取引は比較的金銭面に余裕がある人の遊びとみなされていた感が強くて、「株なんてのは、投機じゃないか」といわれて、違いますよって言い返したりしたものでしたが。
 
 あれから、30有余年。
 それでも、「投資」と「投機」の違いは何だろう?と時に自問自答します。...