NPO法人グレースケア機構代表の柳本文貴さん=6月、東京都三鷹市

 賃上げの波から、介護の現場が取り残されつつある。待遇格差が広がれば人手不足に拍車がかかりかねない。現場からは、効率優先に傾く事業者が出て、介護が行き届かない現状があると危惧する声が漏れる。

 厚生労働省によると、2024年の月額所定内賃金の全産業平均引き上げ額は、比較可能な1999年以降で過去最高の1万1961円(対前年比4・1%増)。うち介護士や看護師ら医療・福祉は6876円(同2・5%増)にとどまり、産業別で最も低かった。

 訪問介護事業やデイサービス施設運営を手がけるNPO法人グレースケア機構(東京都三鷹市)で働く介護福祉士山田涼子さん(45)は「ずっと人手不足だ」と漏らし「報酬が見合わないと感じる人が多いようだ」と言う。

 代表の柳本文貴さん(54)によると、スタッフは約200人おり、依頼を断らないことをモットーに運営してきた。だが、2年ほど前からヘルパー派遣の調整が付かないままの依頼を月に十数件抱えた状態が続く。