〝逆方向への強い打球〟と〝選球眼〟。四回まで無安打に抑えられていた日大山形のエース小林永和を攻略できたのは、戦国岐阜を制した県岐阜商打線の高い対応力だった。第107回全国高校野球選手権第6日は11日、甲子園で1回戦などを行い、県岐阜商は日大山形を6―3で下し、夏の甲子園16年ぶりの勝利を挙げた。県岐阜商は夏40勝目で、春夏通算88勝目。2年生エース柴田蒼亮はストレートが浮き気味だったが、得意のスライダーとカットボールを武器に切り替えたのが奏功。粘りの投球で勝利をもたらした。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

◆逆方向への原点回帰と選球眼で日大山形ダブルエースを攻略
ほとんどが変化球。日大山形先発の軟投派エース小林。中でもチェンジアップが低目に決まり、県岐阜商打線は打ちあぐねた。四回まで無安打。しかもアウトは三つの三振と1犠打のほかは、すべて外野フライ。
この状況を甲子園初采配の藤井潤作監督の言葉が一変させ、名門の嗣子たちの潜在能力を引き出した。「しっかり球を見極め、甘い球を逆方向に強い打球」。岐阜大会で、初戦の5本塁打から見事に切り替えたチームテーマの徹底、対応力の高さが、夢舞台でも発揮された。
五回先頭の5番宮川鉄平。岐阜大会で何度もチームに流れをもたらした頼れる強打者のバットが反撃ののろしを上げる。
2球目にきたのは初球に続き、90キロ台の超スローカーブ。「甘い球だ」。しっかりと見極めた宮川が中前にチーム初安打を放つ。

すぐさま相手暴投で二塁へ。1死後、打席には、岐阜大会チーム内最高打率の7番横山温大。左手にハンデを抱えながら、名門のキーマンとして全国の注目を集めるヒーローが内角への落ちる球を右前に同点打。「引っ張ってしまったが、意識が逆方向にあったことで打てた」と殊勲の一打を振り返る。...