どん底のチーム状態が、選手のまとまりを生み、県岐阜商ナインの潜在能力の開放につながった。第107回全国高校野球選手権岐阜大会最終日は28日、ぎふしん長良川球場で決勝を行い、県岐阜商が大会ナンバーワン投手の帝京大可児・富田櫂成を打ち崩して、10―0で勝利し、3年ぶり31度目の甲子園出場を決めた。

◆鍛治舎野球のフルスイングに原点回帰…第1の潜在能力覚醒
昨秋、新チーム発足と同時に鍛治舎巧前監督から藤井潤作監督がチームを受け継ぎ、名門101年目のスタートを切った県岐阜商。だが、昨秋、今春は選手の持てる力を十分に発揮することができず、いずれもベスト8止まりと結果が残せなかった。
加えて、春以降、3年生の主力が軒並み故障。練習試合の内容も振るわず、大会前のチーム状況はどん底の状態だった。
藤井監督は「自分で考えるように選手に任せた。練習はテストで、試合が答え合わせだが、そのたびに回答が間違っていることが多く重なり、結果も出ずにチーム状態も悪かった」と振り返る。それが「回答を間違えるたびに、打席での工夫やポジショニングなど選手がやるべきことを一つ一つ身に付けていった」と成長に手ごたえを感じながら、夏本番は近づいていった。
そんな中、小鎗稜也、駒瀬陽尊、一時は夏絶望だった坂口路歩も次々に復帰。当時、どん底だったチーム状態の中、「やるべきことに徹しないでどうする」と選手の意識が一つにまとまり、上昇気流が始まった。
潜在能力の開放につながった象徴が打撃力。鍛治舎前監督が「自分が監督をして以降、最強の佐々木泰(広島)の代に肩を並べるほどの打撃力」と指摘する今チーム。小鎗は言う。「力が発揮できない状態で、打撃担当の上畑将部長が『自分たちの持ち味はフルスイング。それをもう一度、徹底しよう』と思い出させてくれた」。

追い込まれてからは鍛治舎監督直伝のノーステップ打法で、ヒットの確率を高めるが、ファーストストライクをフルスイングする原点回帰が見事に結実したのが、大会初戦の大垣養老戦。小鎗の2本を含む5本の本塁打が飛び出し、潜在能力の高さを発揮した。
続く2回戦の加納戦では、復帰後、振るわなかった主砲坂口、春は不調で、鍛治舎監督からメールで励まされたという宮川鉄平の連続本塁打が飛び出した。
だが、本塁打を量産することは得てして大振りの粗削りの打撃につながり、...