少子化や大学入試改革で今、高校を取り巻く環境は大きく変化しています。岐阜県内の高校はどう対応していこうとしているのでしょうか。今回、岐阜新聞デジタルは岐阜県教育行政のトップ、堀貴雄県教育長に直撃しました。県教育委員会は高校で、演劇の手法を応用し、生徒の対話力や表現力を高める取り組みを独自に進めています。いったいどんな内容なのでしょう。高校選びを控えた中学生へのメッセージも寄せていただきました。教育長が語った“後悔しない高校選び”のヒントとは。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

 
 ほり・たかお 1961年生まれ、岐阜市出身、教科は英語。中津、羽島北、各務原西高校、東濃高校教頭、不破高校校長、教育次長などを経て、2021年4月、教員出身者として24年ぶりに県教育長に就任した。現在2期目。クラシック音楽のファン。

 ―岐阜県の高校教育の特徴は。

 岐阜県では、2024年3月に「第4次岐阜県教育振興基本計画」を策定した。教育の基本は「知・徳・体」であり、そのバランスは重要だが、とりわけ第4次計画では大きく四つの施策を定め、その一つ目に「徳」にあたる「『豊かな人間性』の育成」を掲げた。これは3年4カ月にわたるコロナ禍での経験が最も大きな理由だ。

 コロナ禍で、体験活動や交流が制限された。本来、学びの中で育まれる対人関係をつくる力やコミュニケーション能力の低下もあったと感じている。

 だからこそ、これからの子どもたちには、視野を広げ、主体的にさまざまな変化や課題と向き合う中で、人と人が結び付き、尊重しあい、協働しながら、よりよい未来の実現に向かって前進していく力が求められている。

 社会は急速に変化している。国内では人口減少、少子高齢化が進み、国際的には情勢の不安定化、気候変動などさまざまな課題がある。さらには超スマート社会(Society5.0・・・※)の実現を目指し、絶え間ない進歩によりめまぐるしく変化が続く。(※Society5.0・・・サイバー空間と現実空間を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する社会)

 将来の予測はいっそう難しい。そんな時代にあって、子どもたちには他者を思いやり、人とのつながりを大切にする力が求められている。その象徴的な取り組みが「演劇ワークショップ」だ。

 ―演劇ワークショップとは?

 教育長になる前、着任した高校は自己肯定感が持てない生徒が多かった。可児市文化創造センター「アーラ」の館長だった衛紀生さんの助言で演劇ワークショップを2012年に始めた...