下呂市出身の会社社長、中島徳至さん(58)が岐阜大学大学院工学研究科で博士号(工学)を取得しました。2018年に同研究科博士課程に入学以来、7年間にわたって社長業と研究・論文執筆を両立させてきました。多忙な毎日の中、どう学ぶ時間を確保したのでしょうか。ビジネスの最前線で戦いながら学び続ける「時間の使い方」「リスキリングの意義」を聞きました。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

◆博士課程挑戦の原点

博士号を取得した中島徳至さん=岐阜市金宝町

 中島さんは金融とITを融合させたフィンテックベンチャーのグローバルモビリティサービス(東京都)を経営しています。2013年に岐阜市で創業。自動車を遠隔で起動、制御できる独自の技術を使い、海外でローン審査が通りにくい低所得者の自動車購入を支援しています。フィリピン、カンボジアなどに現地法人があり、社員は200人以上、融資申込総額は約3400億円に上ります。

 華やかな経歴ですが、中島さんは挫折を経験しています。1994年に「ゼロスポーツ」を設立。岐阜県発の電気自動車(EV)ベンチャーとして大きな注目を集めましたが、大口契約の解約をきっかけに事業譲渡することに。中島さんは44歳でした。

 博士号を取るきっかけになったのは、この経験でした。「当時何が必要だったのか、どうすればよかったのか。支援機関はどうするべきか」。ずっと考えていたことを研究することにしたのです。

 博士論文の題目は「ベンチャー企業支援による地方創生のエコシステム」。初期に急成長する「Jカーブ型ベンチャー」を支援していく体制づくりや理念を研究。指導教員を務めた岐阜大の高木朗義教授は「真面目に働く人が報われる社会をつくりたい、苦労してきた経験のある先輩として地方で挑戦する人を応援したいという、中島さんの熱い想いが詰まった論文だと思います」と評価します。

◆両立させる時間の使い方

 博士号取得まで7年。激務の社長業と博士論文執筆をどう両立させたのでしょう。中島さんはこんな工夫をしたそうです。...