実験装置に入れたコケ胞子の粒。1粒に約4千個の胞子が入っている(藤田知道教授ら提供)
 コケの胞子が納められた実験装置(中央)=国際宇宙ステーション(JAXA/NASA提供)

 宇宙空間に約9カ月間さらしたコケの胞子を地上に回収すると、8割以上が正常に発芽したとの研究結果を、北海道大大学院の藤田知道教授(植物分子生物学)らの研究グループが21日、米科学誌に発表した。藤田教授は、宇宙でも長期間生存できることを示す結果として「メカニズムは分からないが、予想を覆す生存能力だ。宇宙での農業に向けた研究の一歩になる」としている。

 実験は国際宇宙ステーション(ISS)の日本の実験棟「きぼう」で実施。標準的なコケ「ヒメツリガネゴケ」の胞子約48万個を実験装置の先端に載せ、2022年から23年にかけて約9カ月間、真空の宇宙空間にさらした。その後地上に回収すると、85%が正常に発芽した。

 藤田氏は、約5億年前に陸上に進出して生き残ってきたコケの強さに着目し「宇宙でどうなるか、限界を知りたい」と実験を思い立ったという。コケは陸上の生態系の「パイオニア」的な生物だとして「地球と同じような環境に他の星を変化させることを目指して研究を続けたい」と期待を示した。