2026年5月27日
京都大学 原田博司研究室
京都大学大学院情報学研究科(以下「京都大学」)原田 博司教授の研究グループは、2025年12月に総務省情報通信審議会から一部答申が示された、狭帯域IoT通信システム向けVHF帯(220MHz帯)に対応した無線システムを開発しました。本システムは、スマートメーター等で実績のある国際標準規格「IEEE 802.15.4 SUN」に準拠したWi-SUNシステムをベースとしており、1チャネルあたり400kHzの狭帯域を利用しながら、長距離(約34km)の映像伝送に関する実証試験に成功しました。今回の実証結果から、従来型の移動通信システムではカバーが難しかった空域・海域・宇宙空間においても、映像伝送を活用した新たなアプリケーションの実現が期待されます。
1. 背景
近年、センサー、メーター、モニター等を用いて現場環境の情報を収集したり、現場に設置された各種機器を遠隔制御したりする、いわゆるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)への期待が高まっており、特に無線を利用したIoT通信システムの実現に向けたさまざまな取り組みが進められています。現在のIoT無線通信システムでは、主にUHF帯(920MHz帯)が利用されています。しかし、送信電力が最大250mWに制限されていることから、数値データやテキストデータ等を数km程度伝送することは可能である一方、数十km規模の広域エリアにおいて、映像伝送を含む大容量通信を実現することは困難でした。このような背景から、より広範囲を面的にカバーできるVHF帯を利用した狭帯域IoT無線通信システムの検討が進められ、その技術的条件について、2025年12月に総務省情報通信審議会から一部答申が示されました。本システムでは、下側周波数帯(170.0〜177.5MHz)および上側周波数帯(217.5〜222.0MHz)を利用し、最大5Wの空中線電力による運用が可能となります。これにより、広域を面的にカバーできるだけでなく、ドローンを活用した河川・橋梁点検や、離島・山間地域等への物資輸送などへの応用も期待されています。しかし、VHF帯を利用したIoT無線通信システムについては、映像伝送を含めた実用性や技術的成立性に関する検証が十分に行われていませんでした。
2. 研究成果
京都大学では今回、2025年12月に技術的条件が示されたVHF帯の上側周波数帯(220MHz帯)で動作する狭帯域IoT用無線システムを開発しました。さらに、本システムを用いて、約34kmにわたる長距離映像伝送実験を実施しました。送信側のカメラおよび無線局(以降、送信側と称す)は、奈良県御所市の葛城山ロープウェイの山頂駅展望台に設置し、映像受信側の無線局(以降、受信側と称す)は、京都府木津川市の京都大学 木津農場の屋上に設置しました。両地点間の距離は33.6kmです。
今回の測定で使用したVHF帯(220MHz帯)対応の狭帯域IoT用無線システムの無線装置はスマートメーター等で実績のある国際標準規格「IEEE 802.15.4 SUN」に準拠したWi-SUNシステムをベースに開発したものです。占有帯域幅は400kHz、変調方式としてFSK、伝送速度は150kbpsです。また、送信側は無指向性ホイップアンテナ1本を、受信側は指向性を有するログペリアンテナ1本を、それぞれ無線機に接続しました。受信側のアンテナは、送信側の方向に向けて設置・調整しています。送信側の映像伝送装置は、4Kカメラおよび4K映像エンコーダで構成されており、受信側の映像伝送装置は、デコーダおよびディスプレイで構成されています。この4K画像エンコーダは高精細映像を高圧縮方式により効率的に圧縮することが可能です。今回の実験では、画像のフレームサイズを1920×1080、フレームレートを5fpsに変換して映像伝送を行いました。
大和葛城山からの送信した映像を京都大学木津農場で受信しました。その結果、約34kmの長距離環境においても、400kHzの狭帯域を用いた映像伝送が可能であることを確認しました。なお、木津農場側での受信レベルは-75dBm、パケットエラー率は0%でした。
3. 今後の展開
今回開発したVHF帯(220MHz帯)対応の狭帯域IoT向け無線システムにより、従来型の移動通信システムではカバーが困難であった30kmを超える距離においても、映像伝送が可能であることを実証しました。今後は、より広帯域の伝送が期待できるOFDM方式での通信実験を進めることで、空域や海上、さらには宇宙空間における映像活用型アプリケーションの可能性を探っていきます。









