~住友林業が新たにクローン増殖に成功した3品種を初公開~

2026年6月19日
住友林業

 京都府立植物園(園長:戸部 博、京都市左京区)と住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎、本社:東京都千代田区)は6月19日、京都府立植物園内に開設した新エリア「伝承樹の苑(Garden of Legacy Trees)」のオープニングセレモニーを開催しました。

 「伝承樹の苑」は京都府の歴史的名木や科学的に貴重な樹木を展示し、その価値や由来を後世に伝えるエリアです。主に住友林業が組織培養や接ぎ木で増殖したクローンの樹木を展示しています。セレモニーでは同エリアの紹介に加え、住友林業が新たに組織培養による増殖に成功した京都府立植物園の貴重な桜「かぎろひ」、二条城に所縁のある名木「譽桜(ほまれざくら)」、「御所御車返し(ごしょみくるまがえし)」のクローン苗を初公開しました。これらの苗木は今後の生育状況を踏まえ「伝承樹の苑」に植栽します。

 「伝承樹の苑」の開設と京都府内の名木・貴重木のクローン増殖は、住友林業が参画する「京都府立植物園サポーター制度」に基づく取り組みの第一弾です。京都府立植物園と住友林業は本制度を通し、京都府内の名木・貴重木の保全と次世代への継承を推進していきます。

 


 

■「京都府立植物園サポーター制度」

京都府立植物園は2024年に開園100周年を迎えました。この節目に、より身近で魅力ある施設となることを目指し「京都府立植物園サポーター制度」を創設しています。住友林業は本制度に参画し、同園が掲げる「京都から世界の生物多様性保全に貢献する」というビジョン実現に向け、樹勢・生態の調査やDNAによる品種識別、名木・貴重木の苗木増殖などに取り組んでいます。

「伝承樹の苑」の開設と今回新たに成功した京都府内の樹木のクローン増殖は、本制度に基づく取り組みの第一弾です。名木・貴重木の原木が自然災害や病虫害等により枯死した場合もその遺伝資源を後世へ継承し、消滅リスクを低減します。

(参考) 京都府立植物園HP_京都府立植物園サポーター制度

      京都府立植物園 100 周年、当社が組織培養で増殖した苗木を植樹

 

■「伝承樹の苑」

京都府の寺社などで受け継がれてきた歴史的名木や、京都府内で育種された科学的に貴重な樹木を展示し、その価値や由来を後世に伝える目的で開設しました。

「伝承樹」は京都府立植物園が命名した、京都の歴史に深く関わる樹木のクローンの総称です。植栽する樹木は主に住友林業が組織培養や接ぎ木で増殖したクローンです。エリア内に設置するパネルでは親木の写真や樹木と地域文化との関係性を紹介するほか、クローン増殖技術やDNA保存の手法など文化財的価値を守るための科学的な取り組みを解説しています。

 

■「伝承樹の苑」の展示樹


 

■住友林業の苗木増殖の取り組み

住友林業は歴史的・文化的に貴重な樹木を次世代へ継承する取り組みとして「桜のたすき」プロジェクトを推進しています。

今回新たに成功した「かぎろひ」、「譽桜」、「御所御車返し」の苗木増殖は、「桜のたすき」プロジェクトの一環として「京都府立植物園サポーター制度」に基づき実施したものです。

 

<かぎろひ>

京都府立植物園で育てられたヤマザクラの中から発見された変異個体です。2017年の台風被害による枝折れや樹冠の変化をきっかけに、特徴が明らかになりました。淡紅色の花弁(かべん)に紅色の覆輪状(ふくりんじょう)の絞りが入るなど、特異な花色を持つ点が大きな特徴です。2024年11月に住友林業が組織培養による増殖に着手し、2025年11月に苗木増殖に成功しました。

 

<譽桜>

二条城二の丸御殿にある大広間の西側に位置するヤマザクラで、白く大きな花を咲かせる特徴があります。親木は幹が11本に分かれており、そのうちの1本は枯死していました。2025年2月に住友林業が組織培養による増殖に着手し、2026年3月に苗木増殖に成功しました。

 

<御所御車返し>

二条城二の丸御殿白書院西側に位置する桜で、4本の現存が確認されています。京都の御所や離宮の庭園に広く植えられてきた代表的な品種です。2025年2月、現存する4本のうち1本の樹木から住友林業が組織培養による増殖に着手。2026年5月に苗木増殖に成功しました。

 

■京都府立植物園・住友林業コメント

◆ 京都府立植物園 園長 戸部 博

  京都の社寺に受け継がれてきた名木には、長い年月の中で人々の祈りや暮らしとともに育まれてきた“物語”が宿っています。「伝承樹の苑」では、そのかけがえのない物語と生命を、クローン技術によって未来へとつなぎます。

 植物園は生物多様性の保全を重要なミッションの一つとしています。本エリアは文化と自然をつなぐ新たな拠点です。ここに集う苗木が次の100年の京都を彩り、来園者の皆さまに新たな発見と感動をもたらすことを期待しています。

 ◆  住友林業株式会社 代表取締役副社長 川田 辰己

  このたびは「伝承樹の苑」の開設、誠におめでとうございます。本取り組みに当社が関わる機会をいただきましたことを、大変光栄に存じます。

当社は「木を活かして持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」ことを経営理念に掲げています。京都府立植物園様の「京都から世界の生物多様性保全に貢献する」というビジョンに深く共感し、「京都府立植物園サポーター制度」に参画いたしました。

 当社はこれまで京都・醍醐寺の「太閤しだれ桜」をはじめ、仁和寺の「御室桜」や北野天満宮の「紅和魂梅」など、歴史的・文化的に貴重な樹木の組織培養による増殖に数多く取り組んでまいりました。こうした取り組みをさらに発展させるため、今年3月には「桜のたすき」プロジェクトを発足しています。このたび初公開した「かぎろひ」、「譽桜」、「御所御車返し」の苗木増殖も同プロジェクトの一環として取り組んだものです。今後も名木・貴重木の保全と継承を着実に進め、本エリアの充実に貢献してまいります。

 京都は住友ともゆかりの深い土地であり、先人たちは常に次世代を見据えた事業を展開してきました。その精神を受け継ぎ、100年、200年先を見据えて樹木を未来へつなぐ本取り組みを、引き続き推進してまいります。

■今後の見通し

 京都府立植物園は1924年に日本で最初の公立植物園として開園しました。以来、植物多様性保全の取り組みを通じて京都の植物資源を守り続けています。開園100年を迎えた2024年には未来への種をまく植物園として、「京都から世界の生物多様性保全に貢献する」ビジョンを掲げました。今後は、京都府内の名木・貴重木の後継樹育成と開設した「伝承樹の苑」の充実を図るとともに、生物多様性保全に寄与する貴重木や希少種の増殖・保全に向けた取り組みを促進していきます。

 

 住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。この住友林業グループのバリューチェーン「ウッドサイクル」を活かし、ステークホルダーのニーズに応じて、「森」「木」「緑」に関する様々な知見をトータルコーディネートサービスとして提供しています。今後も自治体や民間企業の森林管理や生物多様性、環境保全のサポートを推進していきます。

 

<参考資料>

■住友林業「桜のたすき」プロジェクト

 住友林業は歴史的・文化的に貴重な木々を次世代へ継承することを目的に、総本山醍醐寺「太閤しだれ桜」や福島・南相⾺市天然記念物「泉の⼀葉マツ」など、これまで25種以上の名木・貴重木の苗木増殖を行っています。こうした名木・貴重木を次世代へ継承する取り組みを体系化し、その意義を知っていただくため、2026年3月に「桜のたすき」プロジェクトを発足しました。古くから日本人に愛され、世界でも日本を象徴する花として親しまれる「桜」。そこに「たすき」という言葉を重ね、大切なものを絶やすことなく未来へつないでいくという想いや、組織培養などの科学技術と文化的価値を結び付けるという意味を込めて命名しています。「桜のたすき」プロジェクトは、桜に関わらず、その他の名木・貴重木の後継樹育成も包括した取り組みとして推進します。

 住友林業グループはSDGs目標年でもある2030年を見据え、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を策定。長期ビジョンでは「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、「市場経済への価値」の3つの価値を掲げています。本プロジェクトは3つの価値のうち、「人と社会への価値」をより一層高めるための取り組みの一環です。今後も本プロジェクトを通して、名木・貴重木と、木とともに育まれてきた人々の記憶や地域の文化を未来へ繋いでいきます。

(参考) 住友林業「桜のたすき」プロジェクトを発足

   ~老齢化や環境変化により衰弱が進む桜を組織培養(クローン)技術で次世代へ継承~

 

 

 

■組織培養法による増殖技術概要

【組織培養の流れ】

①冬芽を採取し、その中から芽の分裂組織(茎頂(けいちょう)部)だけを顕微鏡下で摘出する。

②「不老」の梅用に開発した培養液を入れた試験管中に茎頂部を入れ培養することにより、茎頂部は大量の芽の塊(多芽体(たがたい))に成長する。写真1

③多芽体を固体培地で培養することにより、多芽体から芽が伸長する。写真2

④伸長した大量の芽(シュート)を1本ずつ切り分け、発根を促す培養液を添加した人工培養土に植えつけると4週間程度で発根し、完全な植物体(幼苗)が再生される。ここまでは、無菌条件下で行われる。写真3

⑤外の条件に慣らすため温室内で育苗する(順化処理)。写真4

⑥温室内で十分に成長した苗木は畑で育成する。写真5

⑦苗木は畑で育成することによって、大きく伸びる。写真6

 

 

 

■クローン増殖実績一覧

1998年7月 世界初フタバガキ科樹木の組織培養による増殖に成功

2000年4月 世界初シダレザクラ(京都・醍醐寺)の組織培養による増殖に成功

2009年3月 小田原・紹太寺の「長興山しだれ桜」の組織培養による増殖に成功

2010年2月 京都・仁和寺の「御室桜」の組織培養による増殖に成功

2011年4月 品川区・清岸寺の「祐天桜」の組織培養による増殖に成功

2012年2月 京都・仁和寺の「泣き桜(揚道桜)」の組織培養による増殖に成功

2012年4月 鎌倉・安国論寺の「妙法桜」の組織培養による増殖に成功

2013年3月 広島大学附属高等学校と共同 「エバヤマザクラ」の組織培養による増殖に成功

2015年3月  世界初鑑賞梅(京都北野天満宮「紅和魂梅」)の組織培養による増殖に成功

2015年4月 世界初ソメイヨシノ(土浦市天然記念物“真鍋のサクラ”)の組織培養による増殖に成功

2016年4月 京都・北野天満宮の「北野桜」の組織培養による増殖に成功

2019年2月 福島・南相馬市天然記念物「泉の一葉マツ」の後継樹(実生苗)の育成に成功

2019年4月 愛知・大口町「五条川桜」の組織培養による増殖成功(400本納品)

2020年10月 長浜盆梅の樹齢350~400年の盆梅「不老」「芙蓉峰」「さざれ岩」の組織培養による増殖に成功

2022年3月 東京・伊豆大島の国指定特別天然記念物「桜株」の組織培養による増殖に成功

2023年4月 滋賀・日吉大社「日吉桜」の組織培養による増殖に成功

(参考) 組織培養による苗木増殖:https://sfc.jp/treecycle/value/naegi_zousyoku.html

動画:https://youtu.be/eWgtN_r9HcA?si=msnN2Vcnx8YEfD2z

 

■今後の取り組み

 住友林業は樹勢・生態調査やDNAによる品種識別などの結果を基にした保存活用計画の立案及び後継樹の増殖、樹勢回復などを通し、神社仏閣や自治体の皆様が所有・管理する名木や貴重木を後世に受け継いでいく取り組みをサポートしています。

 全国の名木・古木の増殖に関するご相談をお受けしています。詳しくは担当部署である「森林・緑化研究センター」(WEBサイト:https://sfc.jp/treecycle/tree_utilization/)までお問い合わせ下さい。