家庭訪問のため車で移動する男性教諭。感染リスクから面談は短時間で「これでケアになるのか」と疑問を感じている=12日午前、岐阜市内

 新型コロナウイルス感染症対策の臨時休校を受け、岐阜県内では児童生徒を見守る一環から、多くの小中学校が家庭訪問を行っている。互いに顔を見て話す利点がある一方、感染リスクを減らすため面談時間を短くしており、学校現場は「本当に子どもたちのケアになっているのか」と葛藤する。

子どもの様子確認には必要

 「訪問でなく電話でも良かったのでは」。無料通信アプリLINE(ライン)で読者とつながる岐阜新聞「あなた発!トクダネ取材班」に疑問の声を寄せた、岐阜市の小学校に勤める30代男性教諭は6~12日に約20人の児童を訪ねた。玄関先で生活状況を聞き取るが、面談時間は1人3分ほど。「困り事を話されても教員がその場で対応できることは限られる」と無力感をにじませる。

 男性の勤務校の家庭訪問は、公立学校への臨時休校要請があった2月27日、同市教育委員会が「大至急」として全小中学校に出した通達に基づく。当初は家庭訪問を期間中2度としていたが、3月4日に「至急」と改めて出した通達で16、17の両日を登校日とし、訪問は1度にした。市教委は「子どもが抱えるストレスが深刻化しかねないと判断した」と、より効果的な方法を探ったが「どのような形で実施すべきかは判断に迷った」と葛藤を明かす。

 通知表の手渡しを含め家庭訪問を2度行うとした飛騨市教委は「長い休校で、子どもの様子を直接確認すべきだと判断した」と話す。一方、電話や電子メールで状況を聞き取ったり、放課後児童クラブ(学童保育)を利用できない子を校内で教員が見守ったりと、市町村教委ごとに対応は分かれている。

保護者「子どもは安心する」

 あなトク取材班には、家庭訪問を受けた保護者から「先生と直接会うことで子どもが安心できた」との声も届く。中学生の長男の母親は「一人で留守番させる心配に子の年齢は関係ない。短い時間でもありがたかった」と感謝する。

 感染が広がる中、子どものケアに関し名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「家庭訪問の効率を考えると疑問が残る。非常時だからこそ、LINEやオンライン教室などの新しい試みで働き方を見直す機会にもしてほしい」と話した。

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