客足の回復に不安を抱えながら、客室をチェックする和田滋紀営業部長=郡上市八幡町吉野、ホテル郡上八幡

 「個人客が戻っているものの、本格的な回復には至っていない。電気やガス代、食材費の高騰も直撃し、しんどい」。岐阜県内有数の観光地の郡上市で最大級の旅館「ホテル郡上八幡」(同市八幡町吉野)の和田滋紀営業部長(48)は、現状にため息を漏らす。新型コロナウイルス感染拡大前と比べると客室の稼働率は依然として低く、コロナ禍で打撃を受けた傷が癒えぬまま物価高や光熱費の上昇も重なり、業績回復へは厳しい道のりが続いている。

 客室約50室で約250人を収容でき、清流長良川を望む風呂や地元食材を使った料理が楽しめる旅館。コロナ前は、県内外から年約30万人が訪れる奥美濃の夏の風物詩の郡上おどりのファンをはじめ、インバウンド(訪日客)や冬のスキー客らが利用し、稼働率は年間を通じると約5割。書き入れ時の踊りシーズンは8割になる日もあった。

 だがコロナで状況は一転。団体客も迎え入れる広々とした館内は静寂に包まれた。2020年と21年は郡上おどりの開催が中止だったこともあり、2割を下回った。主力の団体客はほぼゼロといい、宿泊客の2割を占めていたインバウンドもゼロになった。「コロナ禍の過去2年間はお手上げ状態。観光自体が否定され、お客さまが来るはずがなかった」。初めての休業も経験した。

 県の統計調査によると、20年の県内の観光入り込み客数(延べ人数)は、コロナ感染拡大による外出自粛などにより、前年比31・1%減の4935万7千人と大幅に減少。郡上市も同様に25・8%減の383万1千人となり、観光客の減少に伴い宿泊需要も減った。

 感染防止対策を徹底するなど安心して利用できる環境を整え、個人客が回復しつつあるが、足元の稼働率は約25%でコロナ前の半分程度。今夏は郡上おどりの3年ぶりの開催が決まり、予約が入っているものの、「今年の稼働率は期待を込めても35%程度の見通しで、コロナ前に戻るとの実感はない」と肩を落とす。

 追い打ちをかけるように光熱費や食材費の高騰が収益を圧迫している。だが客足の戻りは鈍く「今以上には宿泊料金を上げられない」と苦しい胸中を明かす。

 国は観光支援事業として都道府県が行う旅行割引「県民割」を7月から全国に広げる方針。和田部長は「関西エリアのお客さまが増えるなど、一定の効果が期待できる。こうした割引施策をなるべく長い期間続けてほしい」と望む。さらに「資金面の支援、電気やガス代、食材費の高騰対策にも取り組んでほしい」と願った。