成長著しい水野翔騎手。海外遠征先のマカオでは、重賞初Vを飾った

 笠松競馬の水野翔騎手(22)が海外で大きく羽ばたいた!「燃えてます、勝ちたいです」の言葉通りのナイスファイトを見せて、マカオで重賞初Vをゲット。笠松仕込みの逃げ切りを華麗に決めたのは、あっぱれだ。おしゃれな「派手髪」でも熱い視線を浴びながら、大ブレークとなった。

 8月までの3カ月間、マカオ・タイパ競馬場への短期免許で挑戦中の水野騎手。6月29日、重賞「サマートロフィー」(G2)でマカオ初勝利を飾り、ファンや関係者を驚かせた。デビューして5年。北海道から昨年1月、笠松に移籍。今年は笠松で44勝を挙げ、リーディング3位に躍進する活躍を見せていた。遠征中も精力的な毎日で「徐々に感触をつかめているので頑張ります。マカオでまず1勝を目指します」と闘志を燃やしていた。

2月のウインター争覇に挑んだ水野騎手。笠松での重賞制覇が次の目標となる

 マカオでの7戦目となった「サマートロフィー」(1350メートル、12頭立て)で、7番人気の「Fasuba」(5歳せん馬)に騎乗した水野騎手。ダートコースで積極的なレース運びを見せて、先頭を奪って快走。インコースでじっくりと脚をためると、最後の直線では後続を突き放し、2着に2馬身近い差をつけてゴール。重賞初Vが笠松でなくマカオというのが、飛んでいるこの男らしい。

 会心の重賞初Vにツイッターでも喜びを爆発させた。「マカオで初勝利を挙げることができました。まさか重賞で、G2を勝てるとは思っていませんでした」と本人もびっくり。中野省吾騎手が昨年からマカオで活躍しており、「サポートしてくれた中野さん、攻め馬からレースを乗せてくださるM.C Tamトレーナーに感謝しきれないです。残りの時間、さらに技術を磨いていきたいです」と意欲。

笠松ではリーディングを快走する笹野博司厩舎に所属。渡辺竜也騎手(中央)とともに、ツートップで勝利を積み重ねている水野騎手

 笠松での先生である笹野博司調教師も大興奮。ツイッターで「やったなー。翔ちゃん!マカオ重賞勝ったー! 7番人気か、すごいなあ」と歓喜のメッセージ。「先週のレース後は悩んでいたけど、省吾君のサポートもあり、この短期間で何かをつかんだみたい」とも。観光地であり、ビーチ焼け?した水野騎手の笑顔を、たくましく感じたことだろう。

 ファンからの祝福には「(レースで)ガッツポーズしたのは初めてです。一生忘れられないですね。まだまだいけます。そして、笠松に帰ってからも頑張ります」と。重賞を勝ったことで現地での騎乗数も増えるだろう。「6日のレースでは、4頭の騎乗依頼を頂きました。馬券圏内に入るよう頑張ります」と意欲。マカオジョッキークラブのホームページで、レース映像や優勝後の写真なども配信されている。レースでの制裁が厳しいマカオ競馬。中野騎手は騎乗停止中のようで、水野騎手はフェアプレーでの騎乗を心掛けて、勝利を積み重ねたい。

 日本人騎手のマカオ重賞制覇は、JRAでは岡部幸雄さん(1994年・マカオダービー)、石橋守さん、松田大作騎手。地方競馬では、内田利雄騎手、岡部誠騎手に続く快挙。安藤勝己さんは勝っていないようで、水野騎手は笠松勢として初めてのマカオ重賞Vを達成した。

3月の笠松でのJRA交流戦では、藤田菜七子騎手とも腕を競った水野騎手(左)

 日本では重賞Vがない水野騎手だが、後輩の渡辺竜也騎手が一足早く「飛山濃水杯」で重賞初V(ストーミーワンダー、笹野厩舎)を果たし、大きな刺激を受けた。6月30日には、スウェーデンで行われた「ウィメンズジョッキーズワールドカップ」で、JRAの藤田菜七子騎手(21)が2勝を挙げて総合優勝を飾った。同じ1997年生まれで注目している「菜七子世代」の1人でもある水野騎手。今年3月、菜七子騎手が笠松に初参戦したJRA交流戦では、水野騎手も騎乗し腕を競っている。海外遠征で勝利を飾り、ファンらを喜ばせた2人だが、次は国内での重賞初制覇をぜひ達成したい。

笠松リーディングを6度獲得している東川公則騎手。高知競馬にもチャレンジしており、伏兵馬で初勝利を挙げた

 高知競馬では、6月15日から期間限定騎乗で挑戦している東川公則騎手(49)=松木啓助厩舎所属=も元気いっぱいだ。6月末までに3勝を挙げて、存在感を示している。高知初勝利は、単勝万馬券の11番人気・サーストンヒーローに騎乗して、鮮やかに逃げ切り。3連単73万円となる波乱を呼んだ。メインレースのパール特別でもアーチザスカイで完勝。1日2勝を飾る活躍を見せた。

 「きのうは高知競馬場に来て初勝利! そしてもう1勝。皆さんのおかげです」とファンに感謝のメッセージ。単身赴任で自炊もこなして頑張っている。「地方競馬の未来を盛り上げ隊」の隊長として、笠松競馬の再開にもエールを送り、落馬で療養中の息子・慎君の回復を願っている。

3年連続笠松リーディングの佐藤友則騎手。地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップに出場し、総合5位と健闘した

 各地方競馬のリーディングが勢ぞろいした「2019地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ」に出場したのは佐藤友則騎手。ファーストステージ(盛岡)でいきなり勝利を飾り、総合2位でファイナルステージ(園田)に進出。1戦目が11番人気・レオニーズで追い込み4着と健闘。2戦目はトリアエズナマという面白い馬名の4歳牝馬に騎乗。2番手から積極的な競馬をしたが、息切れして7着に終わった。

 総合5位と健闘。レース後、佐藤騎手は「優勝の可能性もあったが、最後のレースは残念でしたね。楽しんで騎乗できたし、また1年頑張って再度この舞台に立ち、優勝を目指します」と闘志。最終戦で6着だったら、総合2位で表彰台に立てたのだが...。友さんが優勝して「取りあえず生!」と、ビールで乾杯するシーンも勝手に思い描いていたが、本当に惜しかった

 笠松競馬の開催自粛中も国内外で活躍してくれたジョッキーたち。特に水野騎手の海外重賞Vは、暗雲を一掃する明るいニュースになった。県地方競馬組合の管理者が、古田聖人笠松新町長にバトンが渡ったばかりで、幸先良いスタートが切れた。JRAの夏競馬も中京、函館、福島でスタート。中京・木曽川特別では、岐阜県馬主会副会長・吉田勝利さんの所有馬で寺島良厩舎のミスマンマミーア(牝4歳)が鮮やかに差し切り。郷土色満載の活躍で特別レース勝利を飾った。

盛夏シリーズでレースが再開された笠松競馬。ファンの熱い声援を受け、岡部誠騎手騎乗のリリコ(右)がクイーンカップを制覇した

 1開催自粛から再開された笠松競馬「盛夏シリーズ」初日。地方競馬通算900勝達成セレモニーで、吉井友彦騎手が「前開催を自粛したことについて謝りたいです。関係者一同反省し、再発防止に努めて、また良い競馬ができるように頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします」と、騎手会長として決意を述べた。

 来場したファンは昨年よりやや増加。馬券販売額もアップしており、関係者もまずは一安心。前後半3日間ずつ(3~5日、17~19日)の変則開催だが、自粛の影響で3週間以上レースがなかっただけに、出走馬も休養十分だった。1日12レースで、ほぼフルゲート(10頭)で熱戦が繰り広げられた。近年は8~9頭立てのレースが多いが、10頭立てだと予想にも力が入るし、活気に満ちていて盛り上がる。

 4日には3歳牝馬重賞のクイーンカップ(SPⅢ)が行われ、熱戦を展開。園田のリリコが岡部誠騎手の好騎乗で5馬身差の圧勝。待望の2歳新馬戦もスタート。800メートル戦の第1戦はフタリノキズナ(尾島徹厩舎)が49秒台、第2戦は除外と取り消しで3頭立てになったが、リキオサワジ(後藤正義厩舎)とガンバギフ(井上孝彦厩舎)が48秒台の好タイムで駆け抜けた。フレッシュな戦いが繰り広げられ、18日にはサマーカップ(SPⅡ)も行われ、夏競馬真っ盛りとなる。