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オグリの里

オグリ孫のミンナノヒーロー、2着デビュー

立ち上がれ、あしたのために=その13



オグリキャップの孫として、ただ1頭の現役馬。4月に岩手競馬でデビューしたミンナノヒーロー(ローレルクラブ提供)

 笠松競馬のレースは「長~い冬眠、凍結状態」が続いており、「春本番」は素通り。4月29日に予定されていた第30回オグリキャップ記念も開催できなかった。騎手、調教師の馬券購入で計12人が「引退」するなど不祥事が続いたが、ここでちょっと気分転換(ゴールデンウイークでもあり)。オグリキャップの面影が残る孫たちやウマ娘関連の明るいニュースをお届けしたい。

 現役の競走馬ではただ1頭、オグリキャップの孫であるミンナノヒーロー(牡4歳)。4月25日、岩手・水沢競馬場で待望のデビュー戦を迎えた。結果はJRA元オープン馬との大接戦の末、敗れはしたが2着と好走。「頑張って走ったね、涙が出ました」などと応援する全国のオグリファンを喜ばせた。JRAでは未出走のまま登録抹消になったが、個人的にも初めて「一口馬主」会員(ローレルクラブ)になった期待馬で、まずは無事にゴールしてくれて胸が熱くなった。この走りなら初勝利も近いだろう(次走5月9日)。

 ■絶滅ピンチのオグリキャップ血脈を受け継いで

ミンナノヒーローの母はオグリキャップ最後の産駒ミンナノアイドルで、父はゴールドアリュールという血統。5歳上の兄にJRAで3勝したストリートキャップ(引退後、誘導馬を目指して金沢競馬へ)がいる。

 JRA(美浦・斎藤誠厩舎)所属時には脚元に不安を抱え、デビュー目前だった昨年5月、左前脚を骨折。3歳春で登録を抹消されて休養。一時は競走馬として活躍することが厳しい状態にもなり、「このまま引退するかも」との思いもあったが...。

 ミンナノヒーローは、母がいる生まれ故郷の佐藤牧場(北海道・新冠町)に戻って療養。馬体回復後、岩手競馬・佐藤祐司厩舎から再出発。「オグリキャップの血脈を絶やさず、継承していきたい。未出走で終わらせるのは惜しい。何とか勝利を」という牧場主・佐藤信広さんの情熱と使命感、ファンの温かい気持ちにも支えられて初出走が実現。「オグリ血統ロマン」の細くなった糸をつないで、絶滅のピンチから立ち上がってくれた。

待望のデビュー戦で好走したミンナノヒーロー。元JRAオープン馬と競り合い、1馬身差の2着だった(水沢競馬レース映像)

 ■JRA5勝馬とマッチレース、次走へ手応え

 競走馬としては4歳という遅いデビュー。獲得賞金ゼロで、岩手競馬C2最下級(ダート、1300メートル)からのスタートになった。馬体重514キロと力感にあふれ、村上忍騎手の騎乗で2番人気。相手はJRA5勝馬で、南関東オープンを経た移籍馬マイネルネーベル(牡9歳)ただ1頭。ミンナノヒーローはやや出遅れたが、前進気勢にあふれる走りですぐに2番手から追走。マイネルネーベルとのマッチレースが中盤から長く続き、直線では一瞬前に出たが、最後は実績馬との経験の差が出て、1馬身及ばなかった。大差がついた3、4着には笠松での期間限定騎乗の経験がある山本聡哉、関本玲花騎手の騎乗馬が入った。

 佐藤祐司調教師は「勝ち馬の外から寄ろうとする面も見られ、いかにも経験不足でした。レース後の歩様などに異常はなさそうで、この経験を糧に次に向けて調整していきます」と次戦へ意欲(ローレルクラブ近況報告)。

 佐藤牧場でも「ここまで本当に長かった。元気に走って無事にゴールしてくれることを祈っていた。まずはデビューができてうれしいです」と一安心。佐藤牧場出身の活躍馬にはエンパイアペガサス(8歳・岩手)がいる。3年前のオグリキャップ記念を圧勝した馬で、持ち帰った優勝レイをミンナノヒーローの肩掛けにするなどして、ゆかりの深い笠松での快挙を祝った。

 デビュー戦2着といえば、祖父オグリキャップも同じく2番人気で、宿敵マーチトウショウにクビ差負け。2戦目には4馬身差で初勝利を飾った。父ゴールドアリュールも初戦2着で2戦目に勝っており、ミンナノヒーローにも次走で初Vが期待できそうだ。

 また、JRAで1走もできずに、地方競馬で再生を目指した競走馬といえばラブミーチャン。腰が甘くてハードな調教ができず、笠松・柳江仁厩舎に移り、全日本2歳優駿(GⅠ)を制覇するなど地方・中央交流重賞を5勝。NAR(地方競馬全国協会)グランプリの年度代表馬に2度輝いている。

 「挫折を乗り越えて勝てば、新たなサクセスストーリーが始まるかも。JRA登録抹消で見捨てたら後悔する」とミンナノヒーローのデビューを信じて応援を続けてきて良かった。岩手競馬で3勝すればJRAに復帰でき、一口馬主の出資馬として再ファンドにもなるそうで、さらなる成長が期待されている。

オグリキャップ最後の産駒として、佐藤牧場で繁殖馬生活を続けるミンナノアイドルと、オグリ初代オーナー・小栗孝一さんの家族ら

 ■オグリファンの「希望の星」、妹たちもデビューへ

 ミンナノヒーローは、オグリファンの「希望の星」でもある。「JRA登録抹消→地方競馬で3勝→JRAで復活星」という夢へ大きな一歩を踏み出した。性格も前向きの馬で、オグリのように実戦で結果を残すタイプか。無事に競走馬生活を続け、できればJRAに復帰して、全国の競馬ファンにも雄姿を見せてほしいものだ。

 佐藤牧場では、ミンナノヒーローの妹たちも次々と誕生。父モーリスのレディアイコ(3歳、美浦・尾関知人厩舎)がJRAデビューを目指しており、今年2月には父コパノリッキーの「ミンナノアイドル2021」も生まれ、牧場は活気づいている。

 オグリのひ孫には活躍馬も誕生していた。4年前の夏、新潟・アイビスサマーダッシュ(GⅢ)でラインミーティア(西田雄一郎騎手)が、オグリの血統を受け継ぐ競走馬として初めて、JRA重賞Vを飾り、サマースプリント王者に輝いた(翌年、蹄葉炎が原因で死亡)。

 ひ孫の現役馬では、オグリの子キョウワスピカの血統を継承する3勝馬ビビリタマ(牡4歳、川崎)と新馬戦Vのスターバースト(牡3歳、大井)の2頭がいる。同じく2歳牝馬では、ココヒメ(北海道)とハナミデイッパイ(浦和)の2頭がデビューを目指している。

 オグリキャップの後継種牡馬としては、孫のクレイドルサイアー(20歳)がいる。「何とか産駒を」と生産牧場の夢をつないで、昨年2頭の牡馬が誕生。オグリ父系直系の子として「コスモフリップ2020」と「バロンドールパル2020」が1歳になった。クレイドルサイアーの父ノーザンキャップはJRA3勝馬で、笠松に移籍しラストランはオグリキャップ記念だった(9着)。

現役3頭とデビュー前の6頭が「オグリの夢再び」と、血統ロマンを継承。一方で「オグリ」の冠名を持つ現役馬は、笠松にいなくなり、全国でも名古屋のオグリクロノス(牡5歳、オグリローマンの孫)ただ1頭になってしまった。前走は11番人気で3着になるなど元気な姿を見せており、活躍を続けてくれそうだ。

内田博幸騎手が騎乗し、パドックを周回するモシモシとchikaさん手作りの応援幕=2016年12月、中山競馬場

 ■笠松で2勝しJRA復帰、応援実話が「マンガ王決定戦」へ
 
 「ウマ娘」ブームでは、レースがない笠松競馬場に聖地巡礼者の姿もちらほら。漫画から競馬に興味を持って、「オグリキャップの聖地」を見てみようという若者も多いようだが、現在は場内に入れず。お目当てのオグリ像(正門東)は、横から鼻先だけ撮影できるという。レースが再開されて入場可能になれば、馬券はあまり買わなくても、グルメを味わったり、グッズを購入して、場内をにぎやかに盛り上げてくれそうだ。「おじさんモード」だった競馬場がどんな雰囲気に変わるのか、楽しみでもある。

 漫画と競馬のコラボ企画では、年末年始の「あしたのジョー」キャンペーン(地方競馬とJRA)や阪神競馬場「ベルばら」に続いて、新たなファンを開拓。JRAでは「中京競馬マンガ王決定戦 KEIBA-1グランプリ」をインターネット上で開催中。「競馬って、楽しい。」をテーマに、予選通過作品(3部門各3作品)が決勝戦に進出。各部門賞の最終審査をリツイート数で競う(5月12日まで)。
 
 ドラマ部門では、笠松競馬場で出会った1頭の牝馬への思いを描いた「これからも、ずっと」(作者:chika)も決勝戦に進出した。笠松競馬つながりの実話に近い内容でもあり、ちょっと紹介したい。

 作者のchikaさんは8年前、笠松競馬の協賛レースに応募し「良一★生誕88年記念」として応援。勝利を飾ったのはJRA未勝利で笠松に転入したモシモシ(尾島徹騎手)という3歳馬(父ジャングルポケット、母ワナ)。所属先は青木達彦厩舎だったが、青木調教師といえば、騎手時代にオグリキャップのデビュー戦に騎乗した「伝説のジョッキー」でもあった。モシモシは1番人気で圧勝。次のレースでも連勝し、JRAに復帰することができた。

 ここから、作品に描かれているように愛馬となったモシモシの追っかけが始まった。珍名馬でも有名な小田切有一オーナーの持ち馬で、出走が決まると、中京をはじめ中山、小倉、新潟など全国のJRA競馬場へ。パドックでは応援幕を掲示して雄姿に熱視線を注ぎ、「がんばれ馬券」も買ってレースで声援を送った。

 中央での勝利は最後方から差し切った中京での1勝だけだったが、3年余り応援を続けた。無事引退し、昨年秋には、北海道で繁殖馬生活を送るモシモシに会いに行ったそうで、「鼻先に触ったり、ニンジンあげたりして夢のような時間でした」とのこと。「ウマ娘がすごくはやっているし、オグリキャップ像もあるから、再開したらファンの方が聖地巡礼に来ると思います」と、意外な出会いもある笠松競馬への来場を呼び掛けていた。

 内馬場には、騎手がマイクロバスで来場する全国唯一のパドックがあるし、田畑やお墓もある珍しい競馬場。騎手や調教師の不祥事では、いろいろと批判の嵐を巻き起こしてしまったが、ファンの信頼を回復して、立ち上がることができるかどうか。「あしたはどっちだ」の厳しい日々が続くが、レースが再開されて入場可能になったら、昭和レトロの競馬場へ「運試しと肝試し」に一度足を運んでみてほしい。オグリ像も出迎えてくれます。