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オグリの里

笠松競馬の深沢杏花騎手、新厩舎で飛躍へ



ひたむきにゴールを目指し、成長した姿を見せている深沢杏花騎手

 昨春、笠松競馬で20年ぶりとなる女性ジョッキーとしてデビューした深沢杏花騎手(19)。8カ月間のレース休止という苦難の日々を経て、新たな所属厩舎で心機一転。レースができる喜びを体感しながら、ひたむきにゴールを目指し、成長した姿を見せている。笠松ファンは温かい目で応援しており、騎乗技術を磨いて飛躍へとつなげたい。

 深沢騎手は「このまま競馬場がつぶれたらどうしよう」と感じたこともあったが、「再開されて良かった。しっかり仕上げてレースで一生懸命乗りたい」と前向きになった。午前1時台から30頭前後の攻め馬に励み、レース再開とともにモチベーションも上がり、ぐっと明るくなった。

 有観客になった笠松競馬場。パドック前で先輩たちと整列した深沢騎手が、ファンに向かって深々と頭を下げて一礼する姿は好印象。秋晴れの下、元気いっぱい。返し馬へ向かう際などに見せる笑顔も爽やかだ。

 一連の不祥事の余波で、騎手ではただ一人、所属厩舎が変更になった。4月、夫婦が元笠松競馬騎手という田口輝彦厩舎に移籍。奥さんは、笠松の女性ジョッキー1号だった中島広美さんで、息子の貫太君はJRA競馬学校生で訓練中という競馬ファミリー。その一員に加わった深沢騎手は、レース再開とともに気持ちもリフレッシュ。騎乗馬にも恵まれて、少しずつ結果を出せるようになってきた。

 10月7日には小春特別のタラニス(7着)など8鞍に騎乗。憧れの宮下瞳騎手(名古屋)とも対戦し、その背中を追った。この日のレースを無事に終えて晴れやかな深沢騎手に、最近の騎乗ぶりなどを聞いた。

 ■「2着は悔しいですよ、本当に」

 ―きのうも勝ったし、再開してからいい感じですね。
 「厩舎が変わったのが大きいですね。いい馬を先生に乗せていただいて。まだ結果は全然出せていないですけどね」

 ―2着が多いようだけど。
 「2着は悔しいですよ、本当に。(オータムシリーズの)初日は3回もあったんで、(追い上げて届かず)ちょっと悔しかったです」

 ―ファンにとっては2着でもうれしいですよ。
 「フフフッ。ファンはいるかなあって感じです。私には、ファンいないですよー」

 そんなことはないですよ。競馬場に通うオールドファンをはじめ、ネット上では「深沢杏花応援開始!」とか、「同年代だから応援したい」というファンも増えてきている。
 
 ―新しい厩舎で乗っている馬はどうですか。
 「馬力がすごく違いますよ。馬群に入って、今までだったら非力な馬が多かったんで、抑えられたんですけど。いまの厩舎では、馬力のいい馬が多いんで、馬群でうまくちゃんと抑えられていないんで、難しいですね」

田口輝彦厩舎に移籍した深沢騎手。心機一転、タラニスなど自厩舎の馬での活躍が期待されている

 最初の厩舎では、笠松所属を受け入れてもらい、騎手候補生、デビュー時からお世話になった。もちろん感謝の気持ちは強いだろうが、厩舎移籍とともに「新生・笠松」で新たなステップを迎えることになった。

 ―ハナを切らなくても2、3番手から、いい競馬ができることも。
 「きょうは途中でバテちゃって、下がっていっちゃいましたが、(馬の脚質にもよるから)難しいですね」

 ―(他の厩舎の馬だが)金沢重賞「お松の方賞」で騎乗したナラ(9着)に、次はいつ乗るのか。
 「名古屋は使わずに、次の笠松で使うようで、また乗りますよ。(重賞を使ったばかりで)ナラさんも、ちょっとお疲れの様子なんで。とりあえず『疲れているから休ませてあげる』と言われています」

 ナラは10月26日10Rのカシオペア特別に出走を予定している。
 
 ■「チェリーヒックは、レースになったらすごく素直な馬」
 
 ―1番の期待馬は。
 「私は特には分からないですが、(乗っているうちで気に入っている馬は)やっぱりチェリーヒックですね」

 チェリーヒックは昨年のクイーンカップで2着だった4歳牝馬(田口厩舎)。再開後3戦は深沢騎手が自厩舎の主戦として騎乗。1戦目は3番手から松本剛志騎手のメイショウセントレを追って、ゴールではきっちりとハナ差の勝利。いいレースを見せてもらった。その後も2着、3着と安定した力を発揮している。次走は29日1Rの予定。

 「攻め馬では結構大変です。あの子、張り切ったりとか、どこかに行きたがったりするんですけど。乗り役が未熟なのに、レースになったらすごく素直にスーッと動いてくれるんで、馬群でも大丈夫です」

 ―2歳戦の秋風ジュニア(10月8日)には乗らないようだが。
 「(自厩舎の馬で)攻め馬しているのはいるんですけど。まだちょっと技術不足なんで、勉強です。先輩に乗っていただき、勝ってもらいたいですね」

 ―でも田口厩舎の所属騎手は深沢騎手1人だから、同厩舎から2、3頭出していれば、回ってくるのでは。
 「いや私には回ってこなかったです、今回は。2頭出していて、乗り役さんがいなかったんですけど。しょうがないですね、まだまだ」

 秋風ジュニアに挑んだ自厩舎の2頭は3着、4着だった。自分の未熟さを嘆いている深沢騎手だが、伸び盛りでもあり、きっかけ次第でスーッと上へ行くことも可能だ。少しずつ信頼される騎手になって、渡辺竜也騎手のように上位人気馬に乗せてもらえれば、コンスタントに勝てるようにもなる。
 
 ■「重賞レース、来年には乗れるように」

 ―重賞クラスでの騎乗は、来年にはチャンスもあるのでは。
 「まだまだですね。でも来年には乗れるようになりたいです」

 ―再開後は、1開催で最低1勝はできてますね。
 「ハイッ、いまのところ。でも前回はできないかと思いましたよ」
 
 ―リーディングは7位か8位ぐらいでしょ。
 「いやあ、(笠松には)9人しかいないんですよ」
 
 ―名古屋の騎手もいるから。
 「あーそうか。じゃあ、まあまあか。慎先輩(東川)に今開催で抜かされますよ」
 
 9月以降、名古屋での騎乗依頼も笠松の騎手では一番多く、17歳牝馬・ヒカルアヤノヒメにも騎乗(11着)。自分より2歳下だけの超高齢馬で、297戦して14勝。毎月2、3回元気に走っている。

 深沢騎手の今年の騎乗は実質2カ月間。笠松では5勝、2着13回で連対率は19.1%(昨年5.7%)にアップしており、着実に成長している。今後、重賞レースなどで騎乗するチャンスも巡ってくるだろう。

 ところで、地方・中央の若手騎手が対戦するヤングジョッキーズシリーズ(西日本地区)は名古屋ラウンド(11月18日)が残っているが、NARから笠松勢3人にお誘いはない。11頭立ての予定だがフルゲートは12頭。笠松勢の途中からの参加は難しいのだろうが、「チーム地方競馬」をスローガンとしているなら、特例で救済策があってもいいのでは。不祥事の余波で、出場できない若手の深沢騎手と東川慎騎手がちょっとかわいそうだ。1レースずつでも参戦できれるといいが...(長江慶悟騎手は負傷療養中)。

久々に笠松競馬場で騎乗した宮下瞳騎手。地方競馬通算1000勝を目指している

 ■宮下瞳騎手が久しぶりに笠松参戦、「通算1000勝」へ

 7日の最終レース(小春特別)では、ママさんジョッキーである名古屋の宮下瞳騎手が久しぶりに笠松参戦。パドックから返し馬に向かう姿は笑顔があふれており、頼もしい。名古屋の安部幸夫厩舎から2頭出し。宮下騎手は1番人気・ガーネットローズに騎乗し、逃げ込みを図ったが、同厩舎のグットクルサマー=岡部誠騎手=にゴール手前で差し切られた。

 「アッ、岡部さん来たーと思った。(騎乗馬は)フワフワしてましたね」とちょっぴり悔しそうな宮下騎手だが、「地方通算1000勝」の大台も見えてきた。帰り際に「1000勝も近いですが、どうですか」と聞くと「頑張りまーす。まだ先は長いです」と、カウントダウンの道のりを楽しんでるかのようだ。990勝(10月23日現在)とあと10勝に迫っている。

 昨年は国内の女性ジョッキーで初めてとなる年間100勝も達成。数々の記録を更新してきた宮下騎手だが、笠松でも大きな足跡を残していた。先輩の小山信行騎手と結婚した2005年、通算350勝を笠松で達成。当時、吉岡牧子騎手(益田競馬所属)の持つ女性騎手の日本最多勝記録に並んで、花束贈呈のセレモニーも行われた。

 笠松では通算65勝も飾っており、騎手不足で宮下騎手の参戦も増えそうだ。1000勝の節目の頃にも笠松に来てもらえれば盛り上がることだろう。

 深沢騎手が憧れる名古屋の先輩女性騎手2人。木之前葵騎手は9月末のレースで落馬負傷。左の鎖骨を骨折し、復帰に向けて療養中である。JRAの藤田菜七子騎手も同じく左鎖骨の骨折で休んでおり、騎手にとっては、けがを負いやすい箇所でもある。

 攻め馬からレースへと騎乗数も多い深沢騎手。ハードな毎日だが、けがには十分に注意し、これからも笠松競馬場で乗り続け、ファンの声援に応えていきたい。

秋風ジュニアに出走したイイネイイネイイネ。大原浩司騎手が騎乗し4着だった

 ■ゴール前で連呼か「イイネイイネ」
 
 笠松競馬には、ユニークな登録名で注目を集める馬たちもいる。サイレントシズカ(牝3歳、後藤佑耶厩舎)には深沢騎手が騎乗。2走前、出遅れながらも巻き返して後続を突き放し、2着馬に9馬身差の圧勝。観客入りとなった前走は、2番人気で2着。中央で宝塚記念を勝ったGⅠ馬・サイレンススズカをイメージさせる馬名で、「ウマ娘」ファンの人気も高まりそうだ。

 秋風ジュニアに出走したイイネイイネイイネ(牡2歳、田口厩舎)も楽しい馬名。オグリキャップの現役時代に中央で活躍したナイスナイスナイス(1990年・京都記念など重賞2勝)を思い出した。牝馬で91年・皐月賞に挑戦して5着だったダンスダンスダンスという馬もいた。
 
 イイネイイネイイネは門別からの転入馬。初戦・秋風ジュニアは大原浩司騎手が騎乗し4着。兄は一昨年の秋風ジュニアを勝ったダルマワンサで、昨年のベニスビーチに続き、吉田勝利オーナーが3連覇を狙っていた馬。一押し足りなかったが、まずまずの走りで今後の成長が期待され、28日7Rの2歳戦で出走を予定している。
 
 再開後3連勝と大変身したスーチャン(牝3歳)や、全国の重賞戦線などを駆け回るナラ(牝5歳)も人気上昇中。馬名の長さは9文字までと決められているが、大井ではスモモモモモモモモという珍名馬も登場。11戦して、2戦目の3着が最高だが、レースを実況したのが笠松でもおなじみの百瀬和己アナ。本人との「モモ」つながりもあったが、大外を突っ込んできたスモモモモモモモモにも、慌てず滑らかな実況となった。

 馬名から興味を持つことも競馬の楽しみ方の一つ。笠松のイイネイイネイイネはレース慣れも見込め、勝つチャンスは十分にありそうで、ゴール前での実況アナの「イイネ」連呼を楽しみに待ちたい。

 ■28日にラブミーチャン記念

 26~29日のラブミーチャン記念シリーズでは「よくぞ帰ってきた!笠松競馬」など、企業・個人協賛レースが再開され、応援にも力が入る。28日には全国交流・ラブミーチャン記念(SPⅠ、1600メートル)が行われ、地元からはドミニク、シャローナなどが参戦する。秋風ジュニアVのシルバは出走しないが、名古屋、門別、金沢からも出走が予定されている。ここ2年は門別の馬に兵庫の騎手が騎乗してVをさらわれており、今年は笠松勢が意地を見せたい。