朝の会の1分間スピーチ。社会の情報をクラスで共有する=山県市東深瀬、富岡小学校
気に入った記事を見つける2年生=同

県NIEアドバイザー・山県市立富岡小教諭 奥田宣子

 「被災地は遠い出来事ではなく、身近なことだと実感した。この写真は関市の被害状況と災害ボランティアの人たちの支援の様子。7月7日、8日に大雨特別警報が発令されたが、いつ、どんな状況になるのかわからないのが自然の怖さ。お互いを守り合う行動を学ぶ命を守る訓練の大切さを改めて実感した」と語るのは、林優吾さん(11)。『西日本豪雨死者157人に』という見出しの記事を選び、小見出しにある『関市779棟浸水』の部分を示しながら、1分間スピーチが始まった。このスピーチを聞き、何かできることはないかと考え始める仲間が教室の中にいた。

 富岡小学校6年生の朝の会に位置づけている1分間スピーチ。新聞の見出しが、社会の動きを伝え、現実を教えてくれる。このスピーチによって、一枚の記事から社会を知り、内容によっては日常と結び付けて考える力を付けていく。

 最近子供たちが継続的に取り上げたのは、タイの洞窟に取り残された13人のサッカー少年の記事。生存を確認、命がけで救出しようとする隊員、その救出の難しさ、そして全員の救出成功。日々紹介される記事を子供たちは仲間に広めた。記事を読み続け、さらに仲間と話し込む中で、海外の出来事を本気で心配したり、応援したりするだけでなく、自分だったらどうだろう、仲間としてどう支え合えるのかと、困難を乗り越えた救出までの状況を考え合う子供たちが目の前にいた。新聞記事を活用したスピーチは、生きた教材となって子供たちの心を耕している。事実を受け止めながら、身近な問題として考える力は、今後必要となる大きな力である。

 2年生の教室では、図画工作の授業で立体作品を作るために新聞を使っていた。新聞は、大きな袋の中に詰め込み、膨らませる役目として使用される。自分の作りたいものが決まると、早速新聞を開いてくしゃくしゃにするのである。

 小さな手で大きな新聞を開くと、そこに、気になる写真がたくさん載っていた。「あっ、このサッカーの試合、知っているよ。この選手すごいよ」「これきれいなお花。おばあちゃん家にもあるよ」と仲間同士でお互いが興味のある内容を伝え合っていた。

 天気予報を見つける子。前日にテレビで見たことを見つけた子など、多様な話題であふれていた。さらに「取っておこう」と切り抜き始める子もいた。2年生の子たちが興味津々で記事と向き合う姿から、無理なく新聞を活用できるきっかけがここにあることに気付かされた。

 新聞には、たくさんの情報が詰まっている。どこで、どんな出来事が起こっているのか、事実を現場で取材し、記事だけでなく、写真やグラフ、表などで詳しく伝えているのが新聞であることを5年生で学ぶ。新聞離れと言われるが、今毎朝切り抜き抜いた記事を仲間に紹介することで、社会情報を共有している。この積み重ねによって、子供たちの新鮮な目で社会を見つめ、願いをもった素直な思いを発信できる力をつけていきたい。