完成した作品のつぶやきを読んで話し合う参加者ら
記事の回りにつぶやきを書き添えた作品
渡辺裕子さん

「つぶやきNEWSッス」 講師・渡辺裕子さん

 「授業で、引っ込み思案な子どもの言葉を引き出す」「身近なジェンダーを考えたい」-。県NIE推進協議会が岐阜市司町のみんなの森ぎふメディアコスモスで開いた「新学習指導要領の新聞活用ワークショップ」(県教育委員会、岐阜市教育委員会後援)。紹介されたのは、そうした教師の思いをかなえる新聞活用の実践だった。日本NIE学会理事で白鷗大非常勤講師の渡辺裕子さんは「つぶやきNEWSッスでアクティブラーニング」、全国高校NIE研究会常任理事で東京都立青山高地歴科主幹教諭の本杉宏志さんは「新聞で考えるジェンダー~サザエさんが、私も外で働きたいと言ったら~」がテーマ。参加した幼稚園から大学まで、幅広い校種の教師らは、「早速、授業でやってみたい」と熱が入る。2020年度から順次本格始動する新学習指導要領で求められる「主体的・対話的で深い学び」へ、NIEへの期待を改めて強く感じた。

 渡辺さんは、東日本大震災の体験でうまく言い表せなくなった言葉を新聞によって取り戻そうと工夫した実践「ことばの貯金箱」で知られる。この日は、さらに人とのつながりに重点を置いて工夫した「つぶやきNEWSッス」を実践した。

 参加者は、コミュニケーションが図りやすよう4人一組。新聞から気に入った記事などを1点選び、1分間で紹介し合う。模造紙の真ん中にグループ名と日付けを書き、自由に選んだ記事などを貼って、思った事を「つぶやき」として書き添える。他のグループの作品につぶやいてもいい。そのときは付箋に書いて貼る。最後に、自分のグループに戻って、つぶやきを読みながら話し合う。

 この実践は、渡辺さんが中学校教諭時代に痛感した「それぞれの子どもの考えをどうやったら引き出せるか」という悩みの解決策ともなった。グループ学習で、勢いのある子がリーダーシップを発揮すると、主張できない子がいる。自分の考えを表現できない子どもを救うことになった。

 こだわるのは、4人それぞれに異なる色のペンを使うこと。「自分の色は逃げないという安心感と、自分のつぶやきに誰かがつぶやきをつないでくれたことで自分の存在感を確認でき、自己肯定につながる。違った価値観を、その場で知ることができる」と渡辺さん。「まわし読み新聞」との違いについての質問には、リメイクでなく、考えを平等に書いていくと説明した。参加者から「新聞の可能性をさらに広げる実践」と声が上がった。

 渡辺さんは「つぶやきNEWSは、心の中を引き出し、他者とつながり、自分自身を確認できる実践。今回のワークショップは学級作りにお薦めですが、教科の場合は、教科の狙いを大事に、例えば教師主導型の記事につぶやいてもいい。それぞれの子どもの考えをどうやったら引き出せるか、ご参加の先生方に発展させていただきたい」と呼び掛けた。