神崎川の清流をバックに写真撮影する家族=山県市神崎
コワーキングスペースを紹介する担当者(右)=同市神崎、神崎よってちょ
ドラム缶風呂のまき割りを体験する宿泊客=山県市神崎

 豊かな自然に恵まれながらも人口減少が著しく、「限界集落」と言われる岐阜県山県市北山地区で、仕事と休暇を両立させる「ワーケーション」の実証実験が進んでいる。「地域をまるごと一つの宿にする」をコンセプトに、岐阜青年会議所(JC)の有志や、まちづくり団体、関連企業が体験内容を考案。今後現地での実用化を進め、旅行を通じて地域のファンを増やし、移住・定住につなげる。

 「すごい自然。まるでジブリみたい」。7月22日から2泊3日、妻と長男を連れて訪れた神奈川県茅ケ崎市の大手IT企業社員の男性(45)は、木々の間から光が差し込む円原川の絶景を眺め、ため息をついた。男性の家族はドラム缶風呂や、シカ肉のジビエ料理など中山間地域ならではの体験を満喫した。

 山県市北部の旧山県郡美山町にある北山地区は、山や川など美しい自然が豊富で、かつては林業で栄えていた。ただ旧美山町は約30年前から都会への転出が増え、1990年代に1万人前後いた住民は、現在6千人台まで減少。北山地区の人口は約150人で、単身の高齢世帯や空き家が増えている。

 人口減少が続く一方で、最近は人を呼び込もうとする動きがある。地域住民やまちづくり団体の有志が、古民家や廃校を改修し、コワーキングスペースや宿泊施設、レストランを開業している。地区では各施設や自然体験を含め、地域全体を観光拠点にする構想「ヒトイキ村」を進めており、岐阜JCの有志らがワーケーションに着目し、実証実験へ動き出した。

 実証実験は、岐阜JCの事業「ギフ・リード・ミーティング」の一環で進めており、首都圏からの宿泊客を対象とした。円原川のガイドツアーや、神崎川沿いのテントサウナ体験、廃校を活用した農家レストラン「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」での食事など、癒やしのメニューを用意。参加者は昨年オープンしたコワーキングスペース「神崎よってちょ」も見学し、担当者から設備や仕事での活用法の説明もあった。

 民間で新事業を進める動きに対し、山県市の担当者も「地域活性化につながり、交流人口を増やすことができる」と歓迎している。

 今後、ワーケーションの本格実施に向け、岐阜JC有志らが8月21日の例会で、報告会や参加者のパネルディスカッションを行い、評価や課題を話し合う。JCメンバーの恩田佳幸さん(40)は「地域の『本物』を感じてもらい、新たなビジネスモデルを構築したい」と語った。