岐阜県南東部に位置する焼き物の街。土岐市には大小200以上の窯元があり、陶磁器の生産量は日本一を誇る。この地域から生み出される器は総じて美濃焼と呼ばれ、その多様さから美濃焼は「特徴がないのが特徴」と逆説的に語られることもあるが、老舗陶磁器メーカー「伸光窯」(泉町定林寺)の田中一亮(かずあき)社長(44)は「優れた生産技術や伝統のある美濃焼にできないものはなく、世界一誇れる陶器だと思っている」と胸を張る。
◆陶磁器生産日本一、デザイン性に磨き
伸光窯は1895年の創業で、田中社長は5代目。妻や女性スタッフの意見を積極的に取り入れながら、現代の生活スタイルに合わせた機能性やデザイン性に優れた器を生産し、人気を得ている。
「陶磁器業界は今、転換期にあると感じる。新型コロナウイルス禍で忙しい窯元と低迷する窯元の差がつき、明暗がくっきりと分かれた印象」と田中社長。業界はメーカーが商社を通して販売するBtoB(企業間取引)が主体だが、コロナ禍によってBtoC(企業と消費者間の取引)のネット通販に力を入れる事業者が増えた。「商社に評価されなかった器が通販では好評だったこともある。下請け的な意識から自分たちが前に出て商売する意識が強くなった」と語る。
そんな作り手の意識の変化もあり、窯元の製造現場をインターネットを通じて広く発信する動きもある。陶磁器関連の業界団体などでつくる市美濃焼PR委員会は、市内の陶磁器メーカーなど製造工程を仮想現実(VR)で紹介する「美濃焼バーチャル・オープンファクトリー」をウェブサイトで今年から公開。市の担当者は「手軽にものづくりの奥深さを感じてもらい、ゆくゆくは市の観光誘客につなげたい」と力を込める。
地域には焼き物の深い歴史も息づいている。美濃焼は7世紀に焼かれた須恵器を始まりに、1400年にわたって作られてきた。そんな歴史を体感できる場所の一つが織部の里公園(泉町久尻)だ。園内にある国指定史跡「元屋敷陶器窯跡」は安土桃山時代から江戸時代初頭にかけて使われていたとみられる古窯跡群で、美濃桃山陶の変遷をたどることができる。
特に目を引く元屋敷窯は、全長24・7メートル、幅2・2メートルの美濃地域最古の連房式登窯で、むき出しの状態の窯跡を間近に見学することができ、脇に備え付けられた約70段の階段を上り下りすることでそのスケールの大きさを感じられる。美濃陶磁歴史館学芸員の中嶌茂さん(50)は「茶道具を中心に華やかな時代を彩る流行商品を量産していた。歴史館も合わせて見てもらい、ぜひ理解を深めてほしい」と話す。
10月にはイオンモール土岐(土岐津町土岐口)の開業を控え、来店客数は年間約650万人を見込んでいる。近隣には県内一の集客力を誇る土岐プレミアム・アウトレット(土岐ケ丘)があり、相乗効果で大きな人の流れを生み出しそうだ。アフターコロナを見据え、それらを原動力とした地場産業や観光の発展に期待が高まっている。



















