満開を迎え、多くの見物客を魅了する淡墨桜=4月6日、本巣市根尾板所、淡墨公園
出荷される富有柿=本巣市上保
真桑人形浄瑠璃の伝承に注力している真桑文楽保存会の福田種男副座長=本巣市上真桑、本郷研修センター

 日本三大桜の一つに数えられ、市のシンボルとなっている「淡墨桜」をはじめ、豊かな自然に恵まれた本巣市。自然の恵みを受け、「甘柿の王様」と呼ばれる富有柿といった農産物の栽培も盛んで、伝統芸能も脈々と受け継がれている。生活環境も良好で、住民も認める「住みよい街」だ。

 

◆淡墨桜や富有柿、真桑人形浄瑠璃後世に

 今月6日、同市根尾板所の淡墨桜が満開となり、本格的な花見シーズンを迎えた。樹高は約17・3メートル、幹回りは約9・4メートルの巨木に白い花が咲き誇り、暖かな陽気に誘われ、大勢の見物客がスマートフォンやカメラで写真に収めていた。「コロナ禍で沈んだ気持ちを癒やしてくれる。本当にきれい」。京都市から友人と見物に訪れた女性(70)は、うっとりとした表情で見入っていた。

 淡墨桜は国指定天然記念物で、散り際には淡い墨色を帯びることが由来。樹齢は1500年以上ともいわれ、皇位継承を巡る争いによる迫害から逃れようと根尾に身を隠していた継体天皇が、根尾を離れる際、村人との別れを惜しんで植樹したと伝えられる。

 「本巣市の宝だよ」。こう話すのは、淡墨桜などのボランティアガイド「本巣の語り部会」副会長を務める久富正行さん(74)=同市屋井=。ガイド歴10年以上のベテランで、今年も新型コロナウイルスの影響でガイド活動が中止となったが、桜への思いは変わらない。

 新型コロナの感染拡大以前は、例年18万人ほどの見物客が訪れた。コロナ禍で落ち込んだ見物客数は回復しつつあり、「1本の木がこれだけ多くの人を引きつけるのはすごいこと。多くの人に見てほしい」と話す。

 市内では国指定重要無形民俗文化財の「真桑人形浄瑠璃」や「能郷の能・狂言」をはじめとする伝統芸能が、地域住民によって継承されてきた。

 真桑人形浄瑠璃は、同市上真桑の本郷地区に300年以上前から伝わり、県内の人形浄瑠璃では唯一、国の重要無形民俗文化財に指定されている。新型コロナの影響で3年連続で中止となっているが、例年は3月に物部神社で上演され、太夫の語りと三味線の音に合わせた巧みな人形さばきが観客を魅了する。

 江戸時代に利水を巡る争いの解決に私財をなげうって尽力した福田源七郎の功績をたたえ、村人が上演したのが始まりとされる。主催する真桑文楽保存会の福田種男副座長(74)=同市上真桑=は、「ダイナミックな動きに加え、人間が演じているかのような動きが特徴」と魅力を語る。地元の中学生が上演する機会もあり、伝承に力を入れている。「地域の誇りで、伝統を絶やさず今後も残していければ」と願う。

 豊かな自然の恵みに育まれる農産物は市のブランドを高めている。代表例が富有柿だ。柿は市の木でもあり、2020年の市の柿の栽培面積は244ヘクタールで県内で最大を誇る。富有柿は甘みが強く、例年10~12月に収穫され、この時期は市内で鮮やかに色づいた柿畑の光景が広がる。

 市内には樽見鉄道が走り、大型商業施設「モレラ岐阜」などもあり、東海環状自動車道の整備に伴う企業の集積も進み、生活の利便性が高まっている。20年の市の定住意向の調査では、市民の83・8%が「住み続けたい」と答えた。引き続き、自然や伝統、人々の生活が調和したまちづくりが期待されている。