募金の感謝の意を込めて昨年7月に広島市から贈られたアオギリの苗木。生徒たちが大切に育て高さ150センチほどに成長した=不破郡関ケ原町今須、今須中学校
地域住民から戦時中の暮らしについて話を聞く生徒たち=7月、不破郡関ケ原町今須

 全校生徒34人の関ケ原町今須の今須中学校では、3年生12人が平和学習に取り組んでいる。修学旅行先の広島市で被爆者から体験談を聞いたり、戦時中の暮らしを経験した今須地域の高齢者への聞き取り調査などをしたりして戦争の悲惨さ、平和の大切さを学ぶ。広島市へ募金の寄付も行い、同市から感謝の意を込めて、原爆投下の中、奇跡的に生き残ったというアオギリの木の苗木が贈られた。生徒たちの平和への活動は「AOGIRIプロジェクト」と銘打ち、同校に根付いている。

 同校では、毎年3年生が修学旅行で広島市を訪れる。生徒たちは原爆ドームや、漫画「はだしのゲン」の舞台になった本川小学校の平和資料館、旧日本銀行広島支店など被爆した建物を見学。被爆体験者の女性から、町中がただれた皮膚を引きずりながら歩いていた人ばかりだったことや、横たわる遺体をまたいで祖母を捜していたことなど当時の生々しい様子を聞いた。学年主任で社会科を教える藤井健太郎教諭(42)は「戦争の記憶がどんどん薄れていく中で、被爆体験者の痛みや悲しみを聞いた子どもたちには生の声を伝えてほしい。痛みや悲しみを感じることのできる優しい人になってほしい」と願う。

 同市への募金は、原爆ドームの建物を維持していくためには多額の費用が必要なことを知った2017年3月の卒業生が提案し、寄付金を募ったのがきっかけ。昨年の3年生の修学旅行の際、広島市役所を訪れ、5千円を届け、今年も2万3千円を寄付した。昨年7月には同市から、平和記念公園内にあるアオギリの木の苗木が寄贈され、植樹した。苗木は、全校生徒が水やりや草抜きをして大切に育て今では高さ150センチほどになった。

 また、地域に住む70~90代の高齢者11人に戦時中の暮らしについて聞いた。自分たちで「戦争体験お聞かせください!」などと書いたチラシを作って全戸に配布し、話をしてくれる人を募った。戦時中は、食料が乏しかったため山に行って木の実を摘んで食べていたこと、明かりが漏れないように電気に黒い布をかぶせていたことなど、聞いた内容を新聞にまとめた。町内で開かれた「関ケ原合戦祭り」にブースを出展し、学習成果を発表。活動を町内へ広く伝えた。

 「実際に戦争や被爆を体験した人から直接話を聞けたことは貴重な体験だった」という山田怜さん(15)は、戦争は体だけでなく心の傷も深いことを学んだ。「来年からは高校生だが、他の生徒に自分たちが学んだ平和の大切さについて伝えていきたい」と力を込める。