やりがい聞いてみました

認知症ケアのスペシャリスト
浅野 宏隆 さん(特別養護老人ホームラック・神戸町)

グループホームで施設長を務めたことで、介護「前」の住民との関係づくりの大切さに気付いたという浅野宏隆さん。公共性のある社会福祉法人で、職員の育成に当たりながら地域とのつながりづくりに励む=安八郡神戸町北一色、ラック

-現在の仕事内容は。

 今年8月にラックを運営する善心会に就職し、現在は人事や会計などの事務がメインです。17年間介護に携わってきて、ここに来るまではグループホームの施設長をしていました。

 介護職員になったばかりの頃は、認知症のことが今ほど明らかになっていなかったため、全てが手探りでした。その分、知れば知るほどのめり込んでいき、多くの方に正しく知っていただきたいとの思いから、神戸町の認知症サポーター養成講座の講師をするようになりました。

 以前の施設で、これまで福祉とつながっていなかった方の家族が突然来て「自宅ではもう看ることができないので今日から入所できますか」と言われることが何度かありました。その度に「もっと早く言っていただければ、本人も家族もここまで困らなかったのに。施設と地域が離れているのが理由の一つ。介護が必要になる前から、施設と関われる機会があればいいのに」と歯がゆい気持ちでいました。

 また、以前から介護施設運営に関わる会計業務に興味があったのですが、前の職場ではノータッチでした。今後のことを考えたとき、やはり会計の知識が必要になってくると思いました。そこで、社会福祉法人という公共性のある職場で、介護業務にも触れつつ、事務や法人運営のスキルを磨くことが最善と考えました。毎日が新たな発見の連続です。

-介護職に就いたきっかけは。

 高校卒業後、親の勧めで2年間、中国留学をしました。帰国後は工場で働きましたが、同じことを繰り返す日々が向いてなかったようです。自分自身が成長できる仕事を探していた時に出会ったのがグループホームでした。

 「とりあえず」と思って始めたのですが、毎日が変化に富んでいて楽しく、そして刺激的で気付いたら17年もたっていました。働きながら介護福祉士やケアマネジャーの資格も取りました。本当に認知症の世界は奥が深いです。

 介護の職場は、工場や事務所の雰囲気とは全然違います。自分もそうですが、おじいさんやおばあさんが好きで、毎日誰かの役に立ちたいと思って介護の世界に飛び込み、やりがいを見つけたり輝き出したりした職員をたくさん見てきました。介護は私にとっての天職です。

-今後の目標は。

 介護職は大切で必要とされなくてはならない仕事です。ラックの小島隆之介施設長は以前から働き方改革に力を入れていて、ぎふ・いきいき介護事業者のグレード1の認定を受けています。私は人事担当者でもありますので、介護経験を生かし、記録の電子化や夜間の見守りをサポートする介護ロボット「aams」の導入などを進め、ハード面からも、より働きやすい職場づくりを進めていきたいです。活躍中の職員に対しては、「今後、どういうことに貢献していきたいか」というビジョンを見つけてもらえるよう働きかけていきたいです。

 そして個人的には、介護がまだ必要でない段階の方が施設と関われる機会を作り、介護の世界を身近に感じてもらうことで、地域の役に立ちたいという思いでいます。「神戸町で起きた介護の困りごとは、とりあえず善心会に言えば何とかなる」と町民の方に思っていただけるほど、身近な存在になることが目標です。