外国人職員、岐阜で活躍

 介護業界の人手不足に伴い「日本で介護の仕事をしたい」「日本の介護を学びたい」と考える外国人が活躍できるよう、特にこの5年ほどの間にさまざまな制度ができました。県内の施設でも多くの外国人職員が活躍しており、一緒に働く日本人職員からは「とても真面目で丁寧」「言葉の壁があるにも関わらず、介護福祉士合格のための勉強と仕事を両立していてすごい」などの声が上がっています。

 しかしコロナ禍の出入国制限により、受け入れ施設が決まっているにも関わらず来日できなかったり、施設側も面接等のために現地へ出向くことができなかったりするケースが相次ぎました。すでに来日している外国人職員は、里帰りしづらい状況に憂いながらも仕事に励み、介護技術と日本語を学んでいきました。入国制限の緩和で、そんな状況も落ち着きつつあります。外国人職員と受け入れ施設にお話をうかがいました。
 

◆技能実習生を初受け入れ 【山内ホスピタル介護老人保健施設】

 ミャンマー出身のリンリンイーさんとイーイーテッさんは5月中旬に、技能実習生として岐阜市の山内ホスピタル介護老人保健施設にやってきました。2人とも母国の医療福祉の現場で働いており、「介護技術の高い日本で学びたい」と日本行きを決意しました。本来は2020年に来日する予定でした。しかしコロナ禍に加えて母国の軍事クーデターの影響もあり、当初の予定より2年ほど遅れてしまいましたが、二人とも「日本行きを諦めようと思ったことはありませんでした」と口をそろえます。

ミャンマー出身のリンリンイーさん。母国の語学学校の先生に付けてもらった「桜さん」の愛称で利用者に親しまれている

ミャンマー出身のイーイーテッさんは、日本で介護を学んだ後、母国に介護学校をつくることが夢だという

 働き始めて半年ほどがたち、日本での生活や仕事に徐々に慣れてきました。リンリンイーさんは職場では「桜さん」、イーイーテッさんは「優子さん」という名前で利用者や他の職員から親しまれています。リンリンイーさんは「日本人職員はいろんなことを聞きやすくてありがたいです。利用者の皆さんもいろいろ教えてくれます。難しい、大変と思うこともありますがやりがいがあって面白いです」と笑顔を見せます。イーイーテッさんは「将来はミャンマーで介護の学校を開くことが夢。そのためにはしっかりと技術を学び、介護福祉士資格を取れるよう頑張っていきたい」と目を輝かせます。

 同施設で外国人職員を受け入れるのはこの2人が初めて。真野芳宏統括部長は「二人ともハングリー精神があって前向きで、そしてお国柄もあるでしょうが、おじいさんやおばあさんを大切にする姿勢がすばらしい。職員からも利用者からも大変評判が良いです。とても介護に向いていると思います」と太鼓判を押します。日本語学習については、来日前から取り組んでいる習得プログラムをオンラインで受けられる体制を整え、レベルアップをサポートしています。

 仕事面以上に気を配っているのが生活面。「夏の暑さの質が現地とは違うようでバテてしまったり、日本の水が『においが気になる』と飲めなかったり想定外のことがあるのは事実。監理会社に教えてもらいながら本人たちにより良いフォローを行っていきます」と話します。
 

◆一期生、後輩指導ができるまでに 【大東福祉会】

 大垣市の特別養護老人ホーム「ゴールドライフ大東」で働くベトナム人のゴー・ティー・ガーさんは、同施設を運営する大東福祉会の技能実習生の一期生として3年前に入職しました。関根良一理事長は「外国人介護人材を受け入れる際、語学の壁、文化の壁に必ずぶち当たるでしょう。だからこそ本当に人手不足に陥ったタイミングではなく、職員数が足りているうちから準備していくべき。そして早くに来た方が、新しく来た方の指導役を担えるようになれば理想的だと考えました」と思いを語ります。

3年前に技能実習生として来日し、7月に特定技能に移行したベトナム出身のゴー・ティー・ガーさん。今春来日したベトナム人4人の指導役という大きな役割を果たしている

 受け入れ当初、言葉の壁は、翻訳機の支給である程度補えるのではと考えていたものの実際は難しく、日本語講師に毎週来てもらうことに。ガーさんは来日時は日本語能力試験のN4でしたが、来月にN2(上から2つ目の難易度)に挑むまでになりました。介護技術に関しては、母国で看護師をしていたこともあってスムーズに習得し、今では夜勤等も任され、職場にとって欠かせない存在になっています。7月には特定技能に移行。そのタイミングで一時帰国し、現地で生活する娘たちと水入らずの時間を過ごしました。

 同法人では、外国人職員を年に1、2人ずつ受け入れる予定でしたが、入国制限で足止めされていた4人が、この春にそろって入職しました。いずれもベトナム人女性です。そのうち1人はガーさんと同じフロアの担当。「新しく来た子は若いため、考え方の違いに戸惑うこともあります。日本人職員は私に優しく接してくださり、仕事に慣れることができました。後輩にも早く慣れてもらいたい」と話しています。

 ガーさんの現在の目標は、2024年1月に介護福祉士国家試験を受けて合格すること。関根理事長は「利用者に対し、『援助してあげる』という気持ちではなく同じ目線で接していて大変立派。介護福祉士を取ってこの施設でどんどん出世していただきたい」と話します。ガーさんも「介護福祉士を取れたら、娘たちにこっちに来てもらうのも良いのではと考えています」と笑顔を見せます。