岐阜県美術館(岐阜市宇佐)で10月1日から企画展「ab-sence/ac-ceptance 不在の観測」が開かれる。2017年に同館で開かれたArt Award IN THE CUBE(AAIC)2017に出展した三枝愛さん、平野真美さん=岐阜市=、ユニット「ミルク倉庫+ココナッツ」の3組の作家の「今」に迫る企画。そのうち三枝さんは今回の展示に先駆け、4月から県内で滞在制作をしてきた。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」三枝さんは1991年、埼玉県生まれ。現在は京都を拠点に創作活動をしている。AAICでは「庭のほつれ」を発表。東日本大震災以降、生家のシイタケ栽培で使われなくなった原木や捨てられたおがくずなど身辺の環境の変化を「庭」として展示した。作品の素材は今なお三枝さんの手元に置かれている一方、展示空間の建材で使用した中津川市加子母のヒノキで作られたベニヤ板は保存できなかった。同じ木なのに、保存されるものと破棄されるものがあることに違和感を覚え、「道具」としての木の存在を強く意識するようになったという。
5月中旬、三枝さんは岐阜市伊奈波通の善光寺近くにある1777年に建立された松尾芭蕉の句碑で拓本を取った。「山かげや身をやしなはむ瓜ばたけ」は、芭蕉が岐阜の門人からもてなしを受けたときに詠んだ句とされ、県美術館が芭蕉真筆の懐紙を所蔵している。懐紙を元に作られたという句碑は、長い間に傷付けられたり台座を壊されたりしている。
拓本の手順は、まず句碑に画仙紙を巻き、霧吹きで美濃の水をかける。凹凸が浮き出るので、綿を絹の布で包んだ「タンポ」に淡い墨を染み込ませて軽くたたき、紙に写し取っていく。句碑の筆跡のほか傷まで忠実に再現された。
懐紙は同館で美術品として大切に保管されている一方、句碑は空き地の片隅で忘れ去られている。「同じ作品なのに別の残され方がされている」-これもまた、「庭のほつれ」で覚えた違和感と通じる。
三枝さんは、紙を使うには紙のことを熟知する必要があると、美濃市で紙すき体験をした上で句碑の拓本に取り組んだ。6月には、NPOの協力で同市で2度目の滞在制作。紙すき研修や工房見学、制作実験を行い、その成果報告として7月に作品展を開いた。「失われた空間のために、形の先を想像する(仮)」として展示された作品は、「庭のほつれ」で使ったベニヤ板の、残っていた端材で拓本を制作したもので、高さ360センチ、幅80センチ。
今回の企画展では、24点制作した拓本のうち22点をつなげ、展示空間を復元する。句碑の拓本も、同館所蔵の懐紙とともに並べる。いずれも、失われてしまった存在の輪郭を確かめるもの。三枝さんは滞在制作の日々を「とても充実していた」と話し、「今後も美濃市で制作できれば」と意欲を見せる。
また、今月23日には県美術館で「オープニング・クロストーク」が行われた。三枝さんは「『山かげ』の句については、二つの作品を"再会"させたいという思いがあった。展示空間の復元は、ここにあるものが全てではない、その先にあるものを想像してほしい、という思いが込められている」と話した。
このほか、「ミルク倉庫+ココナッツ」は「不在」を多角的に解釈して装置で表現するなどした9点を出品。平野さんは愛犬の遺骨の骨つぼをCTスキャンした映像作品などを出品する。













