外食気分を味わってもらおうと昼食で振る舞われた大手すし店のにぎりずし。職員は大皿から小皿にとりわけ、非日常感を楽しんだ

 施設入所後も、たまにはお店の味を楽しみたい-。こんな思いをかなえようと特別養護老人ホーム「るぴなすビラ」(岐阜市須賀)では先月、昼食に大手すし店の握りずしを注文し、利用者約70人に振る舞いました。

 コロナ拡大以前は、医療機関を受診した後などに外食を楽しむ利用者もいましたが、現在は感染防止対策のため自粛。日常の楽しみが減る中で、飲食店の食事をデリバリーして提供することで非日常感を味わえるのではないかと初めて企画しました。

 今回すしを選んだのは、以前利用者に実施した嗜好(しこう)調査で人気だったため。穴子、エビ、マグロの3種類の握りずしがぎっしり並んだ皿を職員が見せ、小皿にとりわけると、利用者らは目を大きくしてにっこり。さらにノンアルコールビールも特別に用意され、希望した一部の利用者は、職員からのお酌を笑顔で受けました。お店で購入したたこ焼きも一緒に提供されました。

 普段の食事は個々の嚥下(えんげ)能力に合わせ、とろみをつけるなどして提供しています。安全を優先するがあまり、必要以上に食事形態を落としてしまう場合もなくはありませんが、今回はできる限りそのままの味と形で提供しました。るぴなすビラを運営する信輪会の田中信成理事長は「想像以上に食べられた方もいた。利用者の明るい顔をたくさん見ることができ、一歩前進した気持ち。今後も感染対策を行いながら、利用者が楽しめる行事を定期的に計画していきたい」と話しました。