在庫管理をする阪本真記さん。国内外のエールビール約290種類を扱う=岐阜市岩崎

 新型コロナ禍に苦しむクラフトビール業界を支えようと、小さいながらも存在感を見せるエールビール専門の通販店がある。岐阜市の「一期一会(いちごいちえ)~る」。試飲会などイベント開催ができず厳しい日々が続く一方、通常は行列ができて完売するような海外の人気商品を入手しやすくなっており、通販の強みを生かして日本中のビールファンに届けている。店主の阪本真記さん(37)は「ビールを手にする人が増えれば、業界の皆が前向きになれる」と信じ、毎日たくさんの「エール」を送り続ける。

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口コミで人気、約290種類扱う

 事業を立ち上げたのは2018年12月。各地の醸造所が手掛ける個性的なクラフトビールが好きだったが、岐阜県内には海外や地方のビールを豊富に売る店がなく「自分でやろう」と考えたのがきっかけだ。

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在庫管理をする阪本真記さん。国内外のエールビール約290種類を扱う=岐阜市岩崎

 大がかりな宣伝はせず、ツイッターやインスタグラムで情報発信し、口コミで販路を広げてきた。昨秋、現在地に事務所を移して在庫を強化。20種類でスタートした事業は約290種類(海外約7割、国内約3割)を扱うまでに成長したが、販売するのは今も原則「エール」だけだ。

 日本でビールと言えば「ラガー」と呼ばれる種類。すっきりした味、爽やかなのど越しが特長だ。一方、世界には味や色、香りが多彩な「エール」が無数にあり、日本のような「これぞビール」という型がない。阪本さんが引かれたのも、そんな〝自由さ〟からだった。

「型にはまらない」自由さに共感

 生まれは奈良県。中高一貫校を受験して合格したが、学校生活や人間関係になじめず高校を中退。15歳から19歳まで引きこもった。集団生活が苦手だからこそ、型にはまらず、とことん自由なエールビールに「強烈なシンパシー(共感)を覚えた」。

 神奈川県に転居してボランティアなどで少しずつ社会と関わり、いくつか職も経験。知人から仕事を紹介されたのを機に岐阜市に移住すると、名古屋市の酒販店やビアバーに通い、年間300~400種類を飲んだ。

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冷蔵室は3℃に保たれ、国内外から届いたビールのおいしさを保つ

 これまで店で扱ったエールはおよそ2000種類。醸造所によっては限定生産もあり「一度飲み逃すと、二度と飲めないこともある」。一方、ビアバーで目当ての品がなく、代わりに頼んだ一杯のおいしさに驚かされることも。「エールとの出会いはまさに一期一会」。そんな実感を店名に込めた。

「誰でも自分らしく働けると証明したい」

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店名には「エールとの出会いは一期一会」との実感を込めた。看板も自らデザイン

 クラフトビール業界は、醸造所や輸入業者、バー、小売店、消費者と、ビール好きが集まって支え合うコミュニティーのようだと阪本さん。「皆、おいしいものを届けようと頑張ってきた。今はかなりつらいけど、今こそ通信販売の役割や可能性を感じる。一日一日きちんと届けることを積み重ねたい」と前を向く。

 一人で仕事を回すのは大変だが「自分の裁量で、やりたいようにやれるから」と笑顔。今のスタイルにこだわる理由はもう一つある。「自分と同じように集団生活や会社勤めが苦手な人でも、自分らしく働ける場はきっとある。自分をモデルにそれを証明し、積み上げたノウハウをいつか若い子に還元したい」