統一地方選企画「地方議員になろう!」。第2回は、岐阜県内の町議会議員選挙に挑んだ経験者をインタビュー。

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 養老町在住の打楽器「カホン」製作者、ファジー・イッサ(本名・沢田勇)さん(60)は、2015年と19年に養老町議選に立候補。岐阜市出身で、同じ県内でも養老町では移住者の身。「よそ者が出ても無駄」と言われながらも、お金をかけない選挙運動で〝選挙〟のあり方を変えようとした経験を持つ。残念ながら当選には至らなかったが、二度の町議選で得られた経験は? 話を聞いた。

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町議選に挑んだ経験を語る沢田勇さん(左)。右は記者=養老町内


 記者:沢田さんは、15年と19年に養老町議選に立候補しています。当選ラインが500票前後のところ、それぞれ37票と46票。当選には至りませんでしたが、なぜ町議選に立候補したのでしょうか。

 沢田:15年の時は、無投票当選になりそうだったので、無風選挙にしてはならないという思いがありました。それと、この町を変えたいという気持ちから。19年は、難病の方の手助けをしたいという思いがありました。自分も難病を抱えているので(※3月16日配信の記事「『マスク外したくない人たちの事情も分かって』ジストニア患者の男性訴え 岐阜」で紹介)。若い人たちの町からの転出も続き、人口減少を抑えたいという思いもありました。

 記者:町議会議員って、どんな〝職業〟だとイメージしますか。

 沢田:町政に対するオンブズマン的な役割を持ちつつも、指摘だけでなく、町政に対して住民のプラスになることを提案していく―。これが町議の役割だと思っています。国会では野党の議員さんが指摘ばかりしていますが、本筋の国政のことを議論してほしいですよね。

 記者:町議は選挙で当選しないとなれません。15年も19年も、定数13に対して15人が立候補して選挙戦になりました。選挙運動で大変だったこと、気づいたことはありましたか。

 沢田:選挙って不思議ですよね。地区同士の戦い。同じ町内なのに、ある地区から見たら隣の地区の人は〝よそ者〟なんですよ。だから僕みたいに町外から移住してきた人間は、完全にアウェーですよ(笑) 

 立候補を決めた時、自分が住んでいる地区の区長にあいさつに行ったんですけど、「選挙に出ます。応援していただけませんか?」ってお願いすると、この地区は(別の地区の)誰々を応援するからと。なんで?って思いました。地元から立候補するのに。昔から町に住んでいる人からは「よそ者が通る(当選する)わけねえ」とも言われました。「出ても無駄やで、やめろ」と。

 記者:地元の応援がない中、どんな選挙運動を展開したのでしょうか。

 沢田:実は、15年の時は「ゼロ円選挙」をやったんです。選挙運動を行わず、選挙ポスターも作らず、貼りませんでした。当時、会社員だったので、選挙期間中は普通に出社して仕事をしていました。会社の同僚に「選挙カーで回らんでいいんか?」って言われましたよ(笑)

 もちろん、いい加減な気持ちで立候補したわけではなく、選挙ってお金がかかるというイメージがあるので覆したかったんです。若い人たちも立候補しやすいように。それと、無風選挙はいかん、と。無投票当選って、その前の選挙の当選順位のまま次の4年間なんですよね。選挙戦になれば、当選順位が変わるじゃないですか。毎回、血の入れ替え、気持ちの切り替えが必要だと思いますね。

2019年の養老町議選、自家用車で選挙運動を展開する沢田勇さん(沢田さん提供)

 記者:確かに、トップ当選した人はやりやすいって聞きます。そして開票結果ですが、沢田さんの選挙戦、15年は37票。19年は46票。4年で9票増えました。

 沢田:増えましたね(笑)。15年はゼロ円選挙でしたが、19年は選挙運動をしました。でも、選挙ポスターは自分で貼って、選挙カーはレンタルするとお金がかかるので自分の車に選挙ポスターを貼って。スピーカーを助手席の窓から出るように置いて、自分で運転しながら名前を連呼して走りました。

 街頭演説は、堤防の上からとかね。あれはいいですよ。邪魔をするものがないですから。スピーカーをフルボリュームにして(笑)

 2019年の養老町議選、自分で選挙ポスターを貼る沢田勇さん(沢田さん提供)

 ポスターは町内の掲示板に全て貼るのに3日かかりました。妻に手伝ってもらったり、一人で回ったり。これ、見る?っていうような場所にも掲示板があるんですよ。だから、立候補者は自分でポスターを貼るべきですね。町内をくまなく回る中で、町の細かい部分までよく見えますから。ぜひ、立候補者は自分で貼ってください。

 記者:開票結果を見て、どう思いましたか。

 沢田:15年はゼロ円選挙だったので(落選は)やむを得ないと思っていましたが、町内のある人がうちに来て「沢田さん、快挙だ」って言うんです。えっ、当選していないよ。「いや、新人で、よそ者なら二桁いかない。あんた、30票を超える票を取った。これは快挙だ」と。当選ラインは500票前後ですが、僕は完全によそ者なので、二桁で快挙らしいです。

 でも、1票1票が重かったと思いますね。通常は何百、何千と票を取るので、投票してくれた人の顔まで浮かばないと思うんです。でも、数十票だと、たぶんあの人やろうなって顔が浮かぶんですよ。たくさん票を取った人よりも1票が重かったと思います。

 記者:なぜ、今回は立候補しないんですか。

 沢田:前から自分で決めていたことですが、60歳になったら〝新人〟は恥ずかしい。県議や国会議員だと話は別でしょうけど、町議で60歳は…老害? そう思います。

 記者:地方では、議員のなり手がいないと言われます。自営業の人や定年後の道だけでなく、若い人もキャリア形成の中で20代、30代で地元の議員を経験して、次の道に進むことも選択肢の一つでは?と思います。

 沢田:若い人が議員になることに賛成します。柔軟で新しい提案ができるわけですから。でも、どうして立候補しないのか。町議や村議は議員報酬が少なすぎますよね。年間200万円ぐらいの町村もある。30代ぐらいになると、少なくとも年収400万~500万円はないと。会社員をやっていたとして、わざわざ200万円に落としても何もいいことはないですよね。

 それから、供託金。町村議選でも立候補する時に15万円の供託金が必要になりました。本来はない方がいいです。僕が立候補した時は、町村議選に供託金はなく、選挙運動の経費は7万円に抑えました。今は、その倍のお金が必要です。候補者の乱立を防ぐのが目的だと言われますが、供託金があっても都知事選など都市部では乱立していますし、地方の町村議選などは供託金がなくても無投票になることも。あまり関係ないと思います。

 お金ばかりかかると、お金がある人しか立候補できません。選挙はお金がかかるというイメージを崩してもらいたいです。選挙にお金をかけてどうするの?って。そう思います。