映像に残るツチノコの墓 分身祭る「槌の子神社」建立
さて、4月にリニューアルしたばかりの資料館には、87年にツチノコを目撃したという村民に対し、村職員が取材をする翌年の様子を詳しく伝えるパネルなどが並び、目を見張る。電動で飛び出すツチノコの模型もあり、ファンにはたまらない展示になっている。
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映像コーナーも新設され、過去の「つちのこフェスタ」の様子を映像で振り返ることができる。その映像の冒頭には興味深いシーンが流れる。それは、村民がツチノコとみられる生物が埋葬された墓を掘り起こし、「槌(つち)の子神社」として改めて祭る当時の様子を収めた古い映像だ。
ツチノコが祭られているという「槌の子神社」は、村の中心部から車で10分ほどの山あいにある。親田と呼ばれる地区で、段々畑と手入れが行き届いた里山が織りなす風景が広がる。ツチノコの墓とは、「槌の子神社」とは一体何なのか。
近くにある「親田槌の子神社創建縁起」と題された看板や当時の記録、取材証言を基に振り返ると、きっかけは1956年の出来事にさかのぼる。地区内に住む男性が、山林で木を切り倒したところ、木の下敷きになっている生物を発見。注意深くそれを見てみると、それがまさに言い伝えにあったツチノコだったというのだ。
その後、気の毒に思った男性はその生物を埋葬し、「槌の子之墓」として弔ったという。資料館で上映されている映像には、その墓標の姿が残されている。
時は流れて、昭和から平成に変わる時期、前述の通り村内でツチノコブームが訪れる。ちょうどそのころは、1889年の東白川村成立から数えて「立村100周年」に当たる節目の時期でもあり、村内各地で記念事業の企画が立てられていたという。
そんなブームと立村100周年という機運の高まりを受けて、同地区に住む大坪信也さん(故人)を中心に村民で結成されたのが「東白川村槌の子探そう会」だった。ツチノコを生け捕りにして、村を全国にPRする目的で、89年には初めてツチノコを探すイベントを開催。これがツチノコ捜索イベントの第1回目で、名称や規模を変えながら現在の「つちのこフェスタ」につながっている。
同年3月、大坪さんらがツチノコの墓を供養した上で神社を建立し、墓の下の土を〝ツチノコの分身〟として祭った。以来、集落に鎮座する「槌の子神社」は神として集落を見守っている。今でも毎年5月には、「つちのこフェスタ」開催に合わせて神社に関係者が集まり、神事でツチノコに鎮魂や感謝の思いを伝えている。
神社がある親田地区周辺は、ツチノコの目撃情報が多い場所でもある。村役場の担当者や、つちのこ館の村雲さんによると、確認されている最新のツチノコ目撃情報は2018年の夏。同地区を車で走行中の女性が、目前を急に横切るツチノコらしき生物を目撃している。また、取材の中で、それ以降も宅配便のドライバーが、やはり車の前を横切るツチノコらしき生物を目撃したようだといった情報も得たが真偽は明らかでない。
多くの目撃証言が残る親田地区。ひょっとするとツチノコが道を横切ってくれるのではないかという期待を胸に、記者もしばらく車を走らせてみるが、姿を見せたのは野生のシカだけだった。令和に入ってからの目撃証言は確認されていないといい、村の関係者は、道路や護岸工事の影響もあって「人里まで降りてくることが少なくなっているのかも」とする。
ツチノコ、東白川村のマスコットに 村おこし機運が追い風
目撃情報の報告は少なくなったものの、2019年の「つちのこフェスタ」では、村人口の2倍近い4千人の参加者が集まるなど、ツチノコの村として全国的に知られるようになった東白川村。今ではツチノコは村を引っ張るマスコットとして定着している。
当時、村商工会で事務局長を務めており、「探そう会」の活動にも携わっていた今井俊郎村長(72)は「ちょうど地域おこしが全国的に盛り上がっていた時期だった」と振り返る。「80年代は大分県の一村一品運動のように、地域振興策が盛んに行われていた時期だった」とし、村おこしの中核としてツチノコに白羽の矢が立った背景を説明する。
折しも70~80年代は、「ネッシー」といった未確認生物や、「口裂け女」といった都市伝説が流行した時期。そんなオカルトブームも追い風となり、ツチノコ目撃情報の存在が東白川村に全国的な知名度をもたらした。今井村長は「村の新しい魅力づくりの取り組みだった。そして、それが今もきちんと続いている」と目を細める。
再び、つちのこ館へと戻ろう。2階にある資料館には取材中にも、興味を持って訪れる人がいた。同館の村雲さんは「ツチノコに興味を持ち、多くの人に来てもらっている場所。ツチノコを目撃したかもしれないという人が、確認のために訪れることも」と話す。
1階の売店には、ツチノコをモチーフにした村のPRマスコット「つっちー&のこりん」のイラストが描かれたTシャツやエコバッグ、クッキーなどさまざまなグッズが並ぶ。いまや村のマスコットとして活躍するツチノコの姿に村雲さんは「村の誇りであり、愛着のある大事な存在」と語る。
自身はツチノコを目撃したことがないという今井村長は、「見たという人の話は多く聞いている。みんな何かを見ている。だから、きっと何かいるんでしょうね。そこがロマンです」と話した。







