岐阜県では、養豚農家が豚のえさや飼育方法にこだわり、さまざまな独自の銘柄豚肉を生産している。

 おいしい銘柄豚肉があることを知ってもらい、県内に幅広く周知するための一環として、県内の養豚農家、販売店、商品化などに携わる豚肉関係者を紹介していく。

VOL.01 富士屋精肉

岐阜市神田町6-14
☎058-262-3225
http://fujiyaseiniku.com

創業70年、培ってきた目利きの力で良質の豚を仕入れている

 

豚の性質は生産者の人柄でわかる

 柳ケ瀬と背中合わせの岐阜市神田町に店を構え、創業70年を誇る精肉店「富士屋精肉」の社長である吉田國彦さんは、「生産者の人柄をみると育てている豚の性質までわかる」と話す。豚を育てている人の精神状態が、豚の成長具合にも影響を及ぼすことがあるとのこと。長い時間をかけて、豚肉の生産者ともしっかりと交流を深めてきたからこそいえる言葉だ。そんな長年の経験で培われてきた目利きの力を生かして品質の良い豚を仕入れ、お店から多くの人たちにおいしい鮮度の高い豚肉を届けている。

 取り扱っている豚肉の約半分は岐阜県産だ。1日にだいたい6頭の豚を仕入れており、最も多かった1964年の東京五輪の時は、20頭近くを手掛けたこともあった。

 

岐阜の豚は脂の部分が別格

 「戦後になって日本でも豚肉をよく食べるようになった」と話す吉田さん。岐阜では脂ののった豚が好まれ、背脂がまんべんなくついている豚がおいしいとされる。吉田さんもそういったところを重視して豚を仕入れている。「赤身は人気があるが、やはり岐阜の豚は脂の部分が別格」と絶賛。豚肉の甘みを堪能できるバラ肉のしゃぶしゃぶがおすすめだ。その中でも、吉田さんは脂のうま味が凝縮された豚汁が一番だと言う。「豚の脂がぽっと浮いた豚汁は見た目も本当においしそう」と吉田さんは笑顔になる。また、岐阜の豚は肉に臭みがなく、トンカツにしても食べやすい。

岐阜県産の豚肉は鮮度が高く品質が良い

 飼育する農家が与えるえさによって、味も大きく違ってくる。吉田さんは「豚肉は色合いが大事。色の浅いピンク色だと品質が良い」と言う。日本の精肉は切り分けも緻密だ。プロの手によって各部位を細かく切りさばいて販売していることもあり、消費者のニーズに合ったさまざまな肉が提供されている。衛生面での管理もしっかりと行われており、「岐阜の豚は鮮度が高くて安心して食べられる」と吉田さんは太鼓判を押す。

おいしくて安心な豚肉を提供

 一昨年に県内で豚熱(CSF)が発生し、多くの豚が処分された。そんな困難を乗り越えてきた養豚農家が精魂込めて育てた県産豚。これからも県内各地の精肉店から、おいしくて安心しながら食べられる豚肉が消費者の食卓に渡っていく。