親子鷹最後の夏に臨む秋田和哉監督と和佳親子=岐阜城北高
主将でもあり捕手として課題の投手陣をけん引する秋田和佳
4番として強打線の柱でもある和佳
威力ある直球で市岐阜商のエースとして活躍した長男千一郎さん=大垣北
中部学院大時代の三男稜吾さん。社会人チームでプロ入りを目指す=KYB

 息子が4人とも高校球児の岐阜城北・秋田和哉監督(55)。自身は県岐阜商で甲子園出場経験があるが、上3人はいずれもあと一歩で聖地を逃している。次男と三男は県外強豪校に進学したが、長男千一郎さん(28)は、当時父が監督だった市岐阜商に進学し、1年からレギュラーで、親子鷹で甲子園を目指した。あれから13年―。今夏、末弟の四男和佳(17)が〝親子鷹〟最後の夏に挑む。

◆投手として夢実現の寸前で涙をのんだ兄3人

 「兄3人とも甲子園にあと一歩だったので、自分が甲子園に、というプレッシャーは常にあった」。2021年、父が前年から監督を務める岐阜城北に進学した和佳は、兄たちの思いを感じ続けてきた。

 長男千一郎さんは豪快に投げ下ろす威力ある直球が魅力の長身左腕。国際武道大に進んで外野手に転向したが、JR東海でも活躍した。3年の夏はベスト8だったが、前年の秋は東海ベスト4で選抜補欠1位校だった。次男勇介さん(26)は東海大菅生で投手、2014年の3年夏は西東京大会準優勝。兄と同じ大学に進み、現在は美濃加茂西中で講師を務め、高校野球指導者を目指している。三男稜吾さん(23)は東海大相模で2017年夏、神奈川県大会決勝で先発したが、念願は果たせなかった。最速152キロの本格右腕で中部学院大を経て、社会人の日本製紙石巻に在籍し、プロ入りを目指している。

◆捕手、主砲、主将の役割に徹し、最後の夏に挑む末弟

 和佳も県外強豪校進学の道はあったが、中学の監督からの勧めもあり、父の学校を選んだ。内野手で投手も務めたが、チーム事情で1年秋から父と同じ、捕手としてチームをけん引する。「自分だけ野手なので、兄たちと比べることはあまりない」という和佳。チーム課題は投手力だけに「それぞれのよさを引き出すのが役目。強い声を出して、どんな場面でも動じないよう意識している」と夏を見据える。司令塔、主砲そして主将として送る研さんの日々が、兄たちへの過剰な意識を和らげた。「今はプレッシャーを感じない。自分ができることを最大限やり切るだけ」と言い切る。

 父について和佳は「結構、叱られるけど家でもアドバイスしてくれる。監督と父親の使い分けにも慣れ、この環境を有効に生かしたい」と語る。秋田監督は「ほかの選手がいるので、あまり意識はしてしない」と話しながらも「4人の息子が高校野球をしてくれ、今年も息子と甲子園を目指せることは幸せだと思う」と父親の顔ものぞかせる。13年間にわたる父と4兄弟の甲子園への思い―。末弟は指揮官である父とともに夢の実現へ、突き進む。

 取材/文 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材し続けている。