左から、岐阜の鷲見旺宥、県岐阜商の園田進之助、大垣日大の山田渓太、美濃加茂の大嶽一惺

 第105回全国高校野球選手権岐阜大会の組み合わせが決まった。例年になく見どころ満載の今大会、高校野球取材歴35年の記者が注目のV争いを予想した。

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◆層の厚さで盤石の県岐阜商

 26年ぶり岐阜大会3連覇を目指す県岐阜商と、2年連続選抜出場の大垣日大の2強によるマッチレースだが、県岐阜商が一歩リードしていると見る。

 県岐阜商の強みは何と言っても層の厚さだ。140キロ超えの左右5枚をそろえる投手陣は、厳しい内角攻めを習得した左腕のエース今井翼はじめ個々の成長が著しい。

春季東海準決勝の東邦戦で逆転2ランを放ち、覚醒した大器園田進之助=草薙

 打線も鍛治舎巧監督期待の大砲園田進之助が春の東海準決勝の東邦戦での逆転弾で開花。2年の寺前雄貴、日比野遼司がレギュラーを奪うなど競争激化でレベルアップした。主軸の三塚武造は練習試合で安打を量産するなど全国でもひけをとらない強打線は、例年課題の緩い球にも対応でき、歴代の鍛治舎県岐阜商でも確実にトップレベル。

 正捕手於保光晟が目のけがによる出場困難のアクシデントもあるが、強肩の2年生捕手大東要介の試合を経るごとの成長に期待だ。

◆山田の復調で激戦勝ち抜く大垣日大

 大垣日大は選抜直後に阪口慶三監督の孫、高橋慎を一塁から捕手へコンバートしたことで安定。打線は、持ち前のスイングの鋭さが一段と増した。高橋が4番に座り、昨年からけん引してきた米津煌太、エース山田渓太が前後を打つ。

大垣日大の春夏連続出場の鍵を握る山田渓太=同高グラウンド

 今春、変速左腕の矢野海翔、2年で三塁を守る権田結輝の両投手の成長は大きなプラスだが、何と言っても大黒柱山田の出来が鍵を握る。選抜以降、調子が今一つだったが、復調を目指す。ただノーシードながら昨夏苦杯を喫した美濃加茂、第2シードの岐阜第一が同ブロックで、組み合わせ的に激戦は必至だ。

◆夏は69年ぶり、名門復活を目指す岐阜

 今大会の大きな注目が、創立150年で日本最古の高校野球部・岐阜の名門復活への挑戦だ。夏の甲子園は実に69年ぶりとなる。エース鷲見旺宥はじめ遊撃手の井上雄貴、2年の小倉悠叶ら投手陣のレベルは例年になく高い。正捕手篠田健太朗がけがから復帰、小倉の二塁手起用など春課題の守備力もアップした。

名門復活に挑む岐阜のエース鷲見旺宥=長良川

 得点力は依然課題だが、主将の篠田が「パワー、技術で劣る強豪の上をいくため」と指摘する〝先を読み、相手の弱点をあぶり出し、奇策を出して流れをつかむ北川野球〟の習熟度は着実にアップしている。名門ならではの戦いぶりは一戦一戦、目が離せない。

◆美濃加茂、帝京大可児、岐阜第一に注目

 ダークホースは多いが、中でも注目が昨夏、初戦で大垣日大を撃破した原動力の大嶽一惺が復活した美濃加茂。大嶽はその後の準々決勝県岐阜商戦で疲労骨折し、無念の降板。春の県大会1週間前には守備練習で右人さし指を骨折。1年間、ベールに包まれていたが一段と成長。「最速は143キロと伸びは数キロだが、回転数や変化球の切れなど精度が格段に上がった」と大嶽。故障中に木戸脇海晴、若宮楽らも成長。高橋陽一監督は「打力もあり、総合力は就任11年目で一番高い」と33年ぶりの甲子園を狙う。

復活を遂げた美濃加茂のエース大嶽一惺=美濃加茂高グラウンド

 帝京大可児は昨夏の左右二枚での準Vから今年はプロ注目の左腕加藤大和はじめ、140キロ超えの左右各2人に右サイドと多彩な投手陣で挑む。加藤は制球の安定性に欠けるが最速143キロの直球の質は将来性抜群。田口聖記監督は「全体に能力は高いので、チーム課題の人間力を磨いてきた」と語る。総合力で昨年、あと一歩で逃した甲子園へ闘志を燃やす。

 岐阜第一は1番で遊撃手の兼松秀真、外野手の酒井昊、将来性豊かな長身左腕の水野匠登、強豪との練習試合で本塁打を量産している永安弘和ら1年生の加入で戦力が大幅にアップした。田所孝二監督は「昨年のコロナ感染やエースの故障など、ここ数年、万全でなかったが、今年は戦力が充実してきた」と頂点をうかがう。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。