守備練習で軽快な動きを見せる小木曽結日さん。試合当日はノッカーとしてチームを支える=3日午後、可児市坂戸、KYBスタジアム

 高校から野球を始めた女子部員が、試合前のノッカーとして最後の夏を飾る。8日に開幕する第105回全国高校野球選手権記念岐阜大会に出場する東濃高校(可児郡御嵩町)硬式野球部の3年小木曽結日(こぎそ・ゆうひ)さん(17)は、自身は試合に出られないが、「勝ちたい」という思いは誰よりも強い。「一球一球に魂を込めて打つ。ノックを通してメンバーに勝利への思いを伝えたい」。ノック時間7分間の晴れ舞台に、3年間の全てを注ぎ込む。

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 内野はどこでもこなし、クリーンアップを任されたこともある。練習試合では貴重な戦力としてチームを支えている小木曽さんだが、公式戦には規定により女子は出場できない。大会直前の今は、後輩を指導してノッカーを務めるなど、チームをサポートする役割も積極的に果たしている。

 小木曽さんは、中学校時代はソフトボール部に所属していたが、高校球児だった兄の影響を受けて野球に転向。入部当初は男子との体力差に苦しんだ。ランニング、坂道ダッシュ、ベンチプレスなどのトレーニングに打ち込み、やがて先輩らと同じ質量のメニューをこなすようになった。

 2年生だった昨夏の岐阜大会。チームは郡上北高校との連合チームで臨んだ。どれだけ実力を上げても、メンバーが不足している状況でも、小木曽さんはスタンドで試合を見守るしかなかった。「悔しいけど仕方なかった。公式戦に出られないなら練習試合で結果を残そうと思っていた」。前を向いて、さらに練習を重ねた。

 そんな小木曽さんに、今夏の大会で大役が任された。本来なら指導者が行う試合前のノッカーだ。昨夏の大会ではファウルグラウンドから外野手に向けてノックをしたが、今年は打席に立ち、内野のノッカーとしてバットを握る。小木曽さんは「今年は単独チームで出場できるので、絶対に勝ちたい。そんな思いを一打一打に込めてノックする」と意気込む。井戸智弘監督(32)は「後輩からアドバイスを求められるほどの頼もしい存在になってくれた。ノックは前々から任せようと思っていた」と、成長ぶりに目を細める。

 初戦は15日に予定されており、関市の河上薬品スタジアムで武義高と加茂農林高の勝者と対戦する。小木曽さんは試合当日のノックを終えた後、ナインにどんな言葉をかけようか考えている。「昨年は『頑張ってください』だった。今年はガチでいきます」。小木曽さんからのげきが、チームの闘志に火を付ける。