初リーディングを狙う筒井勇介騎手

 笠松競馬の騎手リーディングには、3年連続で佐藤友則騎手が輝いているが、今年は筒井勇介騎手に大きなチャンスが巡ってきた。
 
 8月のくろゆり賞シリーズまでで、リーディング争いは佐藤騎手が77勝でトップ。5勝差の72勝で筒井騎手が追っている。佐藤騎手は、調教中のけがで1開催休んだほか、放馬事故による開催自粛もあって、勝ち星としては満足できない数字だろう。それでも盛岡でのジャパンジョッキーズCで個人優勝を飾るなど全国区で目覚ましい活躍。昨年に続いて今年も南関東への期間限定騎乗に挑戦。10月14日から12月13日までの2カ月間、笠松を留守にするが、4年連続のリーディングにはこだわらず、地方競馬の名手が火花を散らす南関東で騎乗技術を磨く構えだ。

 昨年は佐藤騎手が134勝で1位。筒井騎手は120勝で2位だったが、7月には17勝を挙げるなど「夏男」としてパワー全開。1日で4勝、5勝の固め勝ちもあった。秋以降、南関東へ遠征した佐藤騎手を追撃したが、思うように勝ち星を伸ばせず、リーディング奪取を逃した。それでもここ3年、笠松で76勝(6位)、99勝(3位)、120 勝(2位)と、勝利数&ランキングを着実にアップさせており、今年は一気にトップを奪える好位をキープしている。

ダイヤモンドダンスで昨年の東海ゴールドカップを制覇した筒井騎手と喜びの関係者たち

 筒井騎手は、パドック整列や返し馬に向かう時にも笑顔を見せてくれて、カメラを構える一人として「ファンを大切にするジョッキー」の印象が強い。静岡県出身の36歳で田口輝彦厩舎に所属。重賞は通算11勝。9年前、東海ダービーをエレーヌで制覇しており、笠松では数少ないダービージョッキーとして、騎手リーディングはぜひとも取りたいタイトルだ。

 昨年大みそかの東海ゴールドカップ(SPⅠ)では、筒井騎手が騎乗した6番人気ダイヤモンドダンス(花本正三厩舎)で4馬身差の圧勝。前日には地方通算1000勝目を飾っており、大台達成と5年ぶりの重賞制覇で、1日に2度のウイナーズサークルでのセレモニー。声援を送った家族やファンたちに囲まれて、連チャンモードで大フィーバーとなった。

筒井騎手の1000勝達成を祝ったセレモニー

 昨年のリーディング争いについて「狙っていたんですが、12月に入って1開催で1勝しかできなかったり、なかなか勝てなくなって...。何とか年内に1000勝は達成できて良かったです」と振り返っていた。「佐藤騎手の留守中に勝利を重ねて、リーディングを取るのでは」と周りの期待が大きかったが、それを意識してプレッシャーにもなったようだ。

 今夏のくろゆりシリーズでは、筒井騎手が7勝を挙げて、向山牧騎手、渡辺竜也騎手とともに開催リーディングになる活躍を見せてくれた。年末まで、けがなどなく1開催5勝程度を上乗せしていければ、エース・佐藤騎手が不在の間にトップを奪取し、初タイトルへの可能性はぐっと高まる。リーディング獲得は今年の大きな目標でもあり、昨年の苦い経験を生かして、こつこつと勝ち星を積み重ねていきたい。

3年連続リーディングの佐藤友則騎手。今年も南関東での期間限定騎乗に挑戦する

 佐藤騎手は今夏、各地方競馬のリーディングによる「ジョッキーズチャンピオンシップ」にも笠松代表として出場。「地方騎手日本一」を懸けてファーストステージ(盛岡)で1着と9着、ファイナルステージ(園田)では4着と7着。総合5位と健闘した。優勝者が出場できるJRA「ワールドオールスタージョッキーズ」への挑戦は惜しくも逃したが、来年以降につながる好騎乗を見せてくれた。

 筒井騎手も2年連続でジョッキーズチャンピオンシップの「予選」(リーディング2位の騎手らが出場)を経験。昨年は佐賀で2着、9着(総合4位)、今年のチャレンジステージは金沢で4着、8着(総合7位)。上位2人には残れず、ファーストステージには進めなかったが、今年の笠松リーディングを獲得し、来年こそは胸を張って本戦出場を果たしたい。
 
 今年のワールドオールスタージョッキーズは24、25日に札幌競馬場で開催され、地方競馬からはファイナルステージVの園田・吉村智洋騎手と地方競馬最多勝の大井・的場文男騎手が出場。武豊騎手、藤田菜七子騎手らも参戦。的場騎手は「競馬のオリンピック」と気合十分だ。2014年までの「ワールドスーパージョッキーズシリーズ」時代を含めて笠松勢の出場はこれまで3人だけ。川原正一騎手が総合優勝(1997年)、安藤勝己元騎手が総合3位(95年)、浜口楠彦元騎手は阪神でJRA初勝利を飾っている(2006年)。来年以降、佐藤騎手や筒井騎手にも挑戦してほしい華やかな夢舞台である。

お盆開催で勝利を挙げた筒井騎手と、ものまねタレントの山本高広さん(右)=笠松競馬提供

 笠松競馬のお盆開催では「山本高広来場記念」競走で、パワフルドンキに騎乗した筒井騎手が勝利。表彰式では、この日トークショーで来場者を笑わせたものまねタレントの山本さんの前で、筒井騎手がお先に「笠松にキター!」を披露した。だが、筒井騎手には「笠松にクルー!」などと言わせて、山本さんのネタををいっそう盛り上げたかったのは佐藤騎手。「筒井騎手には、また機会があったらリベンジしてほしい」と、翌日のジャパンジョッキーズC優勝報告セレモニーで突っ込みを入れていた。厳しい口調だったが、これも笠松競馬を熱くする佐藤騎手流のファンサービスなのか。リーディング争いで追撃する後輩・筒井騎手に対する「バトル」の演出のようでもあった。

 20日の名古屋では計4レースに騎乗して3勝した佐藤騎手。絶好調の騎手は1日に5、6勝することがあり、28日から始まる笠松・高原シリーズでも勝利を量産して、南関東に旅立つ前に2位との差を広げておきたいところだ。夏の残暑はまだまだ続きそうだが、笠松競馬を引っ張って盛り上げるリーディング上位2人の熱いバトルに注目していきたい。