「胸を張って帰ってきて」-。13日に行われた第105回全国高校野球選手権大会2回戦で、おかやま山陽(岡山)に敗れた県代表の大垣日大。逆転サヨナラ負けというまさかの幕切れとなったが、懸命に前を向く選手たちにスタンドから温かい拍手とねぎらいの声が送られた。
雨天により前の試合の中断が長引き、大垣日大の試合が始まったのは予定時刻を3時間近く過ぎた午後6時34分。待ちに待ったスタンドは、序盤から点を取り合う試合展開に一気に温度を上げた。
写真部3年生(17)は、仲間が引退する中で1人、部に残り、カメラを手に甲子園に駆け付けた。「1年生の頃からずっと夏の甲子園で撮りたかった。(初戦に続き)夢がかなってうれしい」と涙をにじませ、ナインを支える応援席にカメラを向けた。
序盤の1点差が埋まらないまま迎えた八回、捕手で4番の高橋慎選手が値千金の同点本塁打を放つと、スタンドは喜びが爆発。「やった!」と叫んで跳び上がった母(53)=兵庫県西宮市=は笑顔を見せた後、すぐさま「やっと振り出しに戻っただけ。しっかり守って」と気を引き締めた。
タイブレークの延長十回に追加点を挙げると、生徒たちは肩を組んで応援歌を熱唱し、祈るように手を合わせて守りにつくナインを見守った。敗れた直後はショックのあまり誰もがぼうぜんとして静まりかえったが、ナインがスタンドに駆け寄って礼をすると「よく頑張った」と健闘をたたえ、万雷の拍手で包んだ。
2007年春にエースとして大垣日大を準優勝、夏には8強に導いた男性(34)=兵庫県=もスタンドから後輩を見守り、「一生懸命やった結果。胸を張って帰ってほしい」といたわった。