「岐商100年会」。県岐阜商鍛治舎巧監督が前チーム時に主力の2年生をメンバーに立ち上げたグループラインの名称だ。目的は絶対命題である「創部100周年日本一」の実現に向けた意識の統一。今夏の岐阜大会で3連覇を逃した直後、数人だったメンバーをベンチ入り20人に増やした。迎えた最初の公式戦、岐阜地区大会2回戦の不破・羽島・山県戦は16―0の5回コールド。結果以上に課題克服に向けた内容に鍛治舎監督も手応えを実感する船出となった。
課題の「ここ一番での打撃力」 大阪桐蔭にサヨナラ勝ちで成果
「取れなかった2点」。岐阜大会準決勝で市岐阜商に0―2の最大の敗因は「ここ一番での打撃力」であるのは間違いないが、何よりそれを具現化させるための「選手の主体性の醸成」にあると考えた名将。「どこか、監督が甲子園に連れていってくれるという気持ちがあった。甘い。甘すぎる。そんなものじゃない」。
前チームでも3年生左腕今井翼とともに柱だった森厳徳はじめ池田諒真、関谷大翔の2年生の140キロ超え右腕トリオは全国でもひけを取らない。それだけに高い潜在能力の打撃力をいかに本番で発揮するかが絶対命題実現の鍵だ。
ラインで課題を共有するのはもちろん、選手が野球を徹底的に突き詰める場とした。合わせて前チームでは実施していなかった課題練習と名付けた個人練習を全体練習後に行う時間も設けた。
成果は現れつつある。岐阜大会準決勝翌日に行った最初の練習試合・京都国際戦で、前チームが完封された左腕中崎琉生に2―1のサヨナラ勝ち。今月6日に皇子山スタジアム(滋賀)で行った大阪桐蔭との練習試合も1試合目は1―4で敗れたが、2試合目は八回に3―3で追いつくと、最終回に大東要介、寺前雄貴の連打を足場に、加納朋季が右前適時打を放ち、サヨナラ勝ち。加納は「自分もチーム全体も、いい自信になった」と振り返る。
スタートした〝100年世代〟の今後に注目
それでも目標が高いだけに「まだまだ、県大会圧勝もほど遠い」と名将は〝100年世代〟の研さんを促す。迎えた最初の公式戦は「追い込まれてから重心を低くして下半身で確実に打つ」がテーマ。四死球も多い中、回を経るごとに安打が連なった。「二桁安打しないと500球打ちのペナルティ」の課題もクリアし、4回11安打を放った。
鍛治舎監督も「打撃はよくなってきている」と手応えを口にする。この試合、最初の安打を放った加納も「自分たちのポイントで、芯でとらえる確率が上がってきた」と実感を込める。第1歩を踏み出した〝100年世代〟。今後、どんな成長曲線を描き続けるのか、楽しみだ。