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「たい焼きはあんこをおいしく味わうもの」

 パリパリの薄皮にくるまれた熱々のあんこ。皮の方はサクッとした食感で甘さ控えめ。皮が薄い分、あんの甘みがダイレクトに伝わってくる。

 森さんいわく「たい焼きはあんこを味わってもらう食べもの」。頭の先から食べることを勧められた。あんこの入っていない尻尾を最後に食べると、口がさっぱりして「次もおいしく食べられるから」。尻尾は持ち手で、昔は捨てていたとか。今では想像がつかない食べ方だ。

「天然もの」のたい焼き

 1年半前から通っているという60代の男性は「作り置きを買うのと違って、焼けるのを待つ時間がワクワクする」と話す。「子どもの頃はこれ(天然もの)だった。音と香ばしさが懐かしいね」と笑顔をみせる。皮が冷めてくると味が締まって落ち着いてくるというが「やっぱり焼きたてが一番だね」。

「天然もの」と「養殖もの」それぞれに特長

 なじみ深い「養殖もの」は、一度に複数枚を焼ける平らな金型に生地を流し込んだもの。生地が焼けてきたころにあんを乗せ、金型を閉じ合わせて完成させる。一方で、天然ものは火の通りを1枚ずつ見極められるため、絶妙な焼き加減で仕上げられるのが売り。もちろん、作り手には技術と経験が求められる。

 養殖ものは皮をふっくらと分厚く仕上げている店が多く、パンケーキのよう。天然ものに比べればあんこへの熱の通りは弱い。天然ものは熱々の焼きたてであんこを味わうもの、養殖ものは生地とあんこを一緒に味わうものといった印象だ。

焼きたてのたい焼きを客に手渡す森弘明さん

 天然ものは1枚ずつ焼くため、養殖ものの3分の1から4分の1ほどしか作れないという。1本2キロの焼きごてを片手で一日中転がし続ける重労働。福丸では、多い時に800個を販売するが、「営業が終わると握力がなくなる」という。