郡上おどりが開幕し、旧庁舎記念館前に広がった踊りの輪=2018年7月、郡上市八幡町島谷
伝統を受け継ぐ(左から)藤田政光会長、吉田将克さん、野田愛美梨さん=郡上市八幡町島谷、市産業プラザ
水しぶきが舞う中、勢いよく川を下るラフティングの参加者=郡上市美並町、長良川
スキー場の敷地内に開業したアドベンチャーパーク=郡上市明宝奥住、めいほうリゾート

 名古屋市から車で約1時間半。東海北陸自動車道の郡上八幡インターチェンジに差し掛かると、右手に視界が一気に開ける。山あいの街は山上の郡上八幡城が存在感を放ち、「積翠城」の別名が表す通り、夏には積み重なる深い緑に包まれる。

 豊かな自然に囲まれた岐阜県郡上市では、独自の文化や歴史が大切に受け継がれてきた。国重要無形民俗文化財「郡上おどり」は、今年が保存会発足100周年の節目。市内では記念事業の準備が進められている。

 

 1922(大正11)年に結成された郡上おどり保存会は、同市八幡町で毎年夏に繰り広げられる郡上おどりを支える。踊りの輪の中心に設けられる踊り屋形では、おはやしに合わせて唄い手が声を響かせる。

 「国内から海外まで各地で踊りを披露してきた」と振り返るのは、保存会の藤田政光会長(89)=同市八幡町島谷=。郡上おどりの魅力を発信するため、中国や米国でも踊りの輪をつくった。現地の人々も喜んで踊ったという。

 400年以上続く伝統行事だが、新型コロナウイルス禍で一昨年、昨年と2年連続で開催中止となった。代替策として、運営委員会はインターネットを活用したライブ配信を企画。保存会員らが画面越しに踊りとおはやしを発信した。「形は違っても良い内容を届けたい」と、会員が思いを一つにして臨んだ。

 歴史を次の100年へとつなぐには、保存会に若い担い手の存在は欠かせない。最大で100人以上いた会員も現在は50人ほど。活動を支えるのは70、80代が主体で、40代以下はほぼいない。藤田会長は「高校を卒業後、進学や就職で市内を離れる人が多いという地域の特性もある」と指摘する。

 ベテランの会員たちが期待するのは、吉田将克さん(24)=同市八幡町美山=と野田愛美梨さん(27)=同市八幡町鍛冶屋町=だ。2人は育成組織のジュニアクラブの出身。吉田さんは地域の指導者に誘われたのがきっかけでクラブに参加した。野田さんは保存会の唄い手で、大好きだった祖父と共演したくて活動に加わったという。

 吉田さんは太鼓、野田さんは三味線の演奏を担当する。吉田さんは「楽しそうに演奏するよう心掛けている。踊っている人たちが楽しめるように、まずは自分から楽しむ」とマスク越しでも笑顔を絶やさない。野田さんは「周りの音に合わせつつ、いかに自分の音を奏でるかを意識している」と話す。

 伝統を継承しようと、2人はジュニアクラブでも子どもたちの指導に熱心に取り組む。ともに市外で会社員として働く身で、仕事や家庭の環境で同世代が保存会に入るハードルの高さも知る。それでも「将来の入会につながるよう、指導する上で演奏を好きになってもらうことを大切にしている」と口をそろえ、「郡上おどりを次の時代につないでいきたい」と決意を語る。

 新型コロナ禍では、屋内の娯楽よりも感染リスクが低いとしてアウトドア人気が高まった。郡上市では自然に囲まれた環境を生かし、感染収束後のインバウンド(訪日観光客)需要も見据えて集客に取り組んでいる。

 郡上市観光連盟は、インターネットを通じた魅力発信に力を入れる。運営するアウトドア情報の観光ウェブサイトは、地域情報を発信する全国の媒体を対象にしたコンテストで入賞。市内で楽しめるスキーやラフティング、サイクリングなど多彩な自然体験を紹介する。

 各スキー場では、バギーでゲレンデを走る体験やキャンプ、ワイヤで滑降するジップラインなど夏季のアクティビティも定着し、雪のない「グリーンシーズン」でも集客を伸ばしている。Wi-Fi(ワイファイ)の整備やピクトグラムを使った多言語看板の設置をはじめ、収束後を見据えて訪日客を取り込むための環境整備も進む。関係者は「アウトドアの街として郡上のブランドを高めていきたい」と意欲を燃やす。